質問者:
教員
富山大学小泉桂一
登録番号3076
登録日:2014-06-12
初めまして。みんなのひろば
植物リボソーム、またはrRNAの分離
当方、富山大学和漢医薬学総合研究所に勤務しております小泉と申します。
専門は、腫瘍免疫学で、植物生理に関しては、全くの素人です。
現在、植物のリボソームに興味を持っています。
イメージですが、植物カルス細胞から、リボソームだけを分離してみたく思っております。
何か、密度勾配遠心等で、植物カルス細胞からリボソームだけを分離可能なのでしょうか。
また、その他の方法でも構いません。
ご教示頂ければ嬉しいです。
なお、以下に、過去の類似の質問を記載させて頂きました。
小泉 拝
初めまして。質問させてください。
先日リボソーマルRNAについて調べていたのですが、動物に関する知見は載っていても、
植物に関するものがなかなか見あたりませんでした。
植物にはどのような大きさのrRNAがあって、大きさが違うと何が違うのでしょうか?
また、参考になる文献などがありましたら教えてください。
よろしくお願い致します。学生 山本
山本さま
植物のリボソームについて、次のようなことが判っています。
(1)植物の細胞質リボソームの大きさは80Sで、40S小サブユニットと60S大サブユニットからなる(動物の細胞質リボソームと同じ大きさ)60Sサブユニットには25S、5.8S、5Sの大きさのリボソームRNA(rRNA)が含まれている(25S rRNAは動物の28S rRNAに相当します。大きさの違いをさらに調べると面白いと思います)
40Sの小サブユニットには、17〜18S rRNA(イネでは17S、シロイヌナズナでは18Sと一般に言われている)
(2)動物になくて、植物で最も重要なオルガネラである葉緑体の中には70Sリボソームがあり、30Sと50Sのサブユニットからなる。30Sサブユニットには16S rRNAが、50Sサブユニットには23S rRNA、4.5S rRNA、5SrRNAがそれぞれ含まれている。
(3)植物ミトコンドリアのrRNAの大きさは、26S, 18S, 5S。
以下の本が参考になると思います。
植物生化学、Hans-Walter Heldt著、金井龍二(訳)、シュプリンガー・フェアラーク東京。
杉田 護(名古屋大学)
2008-08-07
名古屋大学
杉田 護
富山大学 小泉桂一さま
ご質問どうも有難うございました。
カルスを研究されている奈良先端科学技術大学院大学の大谷美沙都先生に御回答頂きました。
結論からいうと、植物からのリボソームの単離は可能です。もし植物組織を大量に(グラム単位で)簡単に準備できるようなサイズの植物でしたら、カルスを作る必要もなく、そのまま組織を材料にできるかもしれません。実験植物として使っているシロイヌナズナですと、残念ながら小さいので、カルス化(あるいは培養細胞化)してそれなりの量の実験材料を確保する必要があります。
基本的な実験の流れとしては、調製したカルスをプロトプラスト化(細胞壁を消化して細胞壁をもたない状態の細胞にすること)し、液胞を除いたのち細胞抽出液を超遠心分離してリボソームを単離します。昨年、シロイヌナズナのカルスから生物学的活性のあるリボソームを単離する方法を報告した論文が出ていますので、ご参考いただければと思います。
Stupina and Simon (2013) Preparation of biologically active Arabidopsis ribosomes and comparison with yeast ribosomes for binding to a tRNA-mimic that enhances translation of plant plus-strand RNA viruses. Front. Plant Sci., 22 doi: 10.3389/fpls.2013.00271
この論文にもありますが、植物細胞からリボソームを分画するときにもっとも注意すべき点は、植物細胞に特徴的なオルガネラである液胞の扱いです。液胞は成長した植物細胞の90%ほどを占める巨大な構造体で、タンパク質やRNAの分解酵素がため込まれています。そのため、リボソーム単離の際に液胞も同時に壊してしまうとリボソーム分解が起こり、良い状態のリボソーム単離は望めません。(液胞の詳細は、http://www.jspp.org/17hiroba/kaisetsu/sato.html をご参考ください) 蛇足かもしれませんが、このことに気がついて、プロトプラストを密度勾配遠心にかけ液胞を取り除いた細胞(脱液胞細胞)をつくる方法を確立したのは、日本の植物科学研究者の先生方です。個人的には、日本植物研究の大きな成果のひとつではないかと思っております。また、リボソーム単離と関連するところですと、北海道大学の内藤先生の研究グループが脱液胞細胞の抽出液から無細胞タンパク質合成系の作出法を確立なさっていますので、そちらもぜひご参照ください(ラボHP: http://arabi4.agr.hokudai.ac.jp/arabi.html)。
大谷美沙都(奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科)
ご質問どうも有難うございました。
カルスを研究されている奈良先端科学技術大学院大学の大谷美沙都先生に御回答頂きました。
結論からいうと、植物からのリボソームの単離は可能です。もし植物組織を大量に(グラム単位で)簡単に準備できるようなサイズの植物でしたら、カルスを作る必要もなく、そのまま組織を材料にできるかもしれません。実験植物として使っているシロイヌナズナですと、残念ながら小さいので、カルス化(あるいは培養細胞化)してそれなりの量の実験材料を確保する必要があります。
基本的な実験の流れとしては、調製したカルスをプロトプラスト化(細胞壁を消化して細胞壁をもたない状態の細胞にすること)し、液胞を除いたのち細胞抽出液を超遠心分離してリボソームを単離します。昨年、シロイヌナズナのカルスから生物学的活性のあるリボソームを単離する方法を報告した論文が出ていますので、ご参考いただければと思います。
Stupina and Simon (2013) Preparation of biologically active Arabidopsis ribosomes and comparison with yeast ribosomes for binding to a tRNA-mimic that enhances translation of plant plus-strand RNA viruses. Front. Plant Sci., 22 doi: 10.3389/fpls.2013.00271
この論文にもありますが、植物細胞からリボソームを分画するときにもっとも注意すべき点は、植物細胞に特徴的なオルガネラである液胞の扱いです。液胞は成長した植物細胞の90%ほどを占める巨大な構造体で、タンパク質やRNAの分解酵素がため込まれています。そのため、リボソーム単離の際に液胞も同時に壊してしまうとリボソーム分解が起こり、良い状態のリボソーム単離は望めません。(液胞の詳細は、http://www.jspp.org/17hiroba/kaisetsu/sato.html をご参考ください) 蛇足かもしれませんが、このことに気がついて、プロトプラストを密度勾配遠心にかけ液胞を取り除いた細胞(脱液胞細胞)をつくる方法を確立したのは、日本の植物科学研究者の先生方です。個人的には、日本植物研究の大きな成果のひとつではないかと思っております。また、リボソーム単離と関連するところですと、北海道大学の内藤先生の研究グループが脱液胞細胞の抽出液から無細胞タンパク質合成系の作出法を確立なさっていますので、そちらもぜひご参照ください(ラボHP: http://arabi4.agr.hokudai.ac.jp/arabi.html)。
大谷美沙都(奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科)
JSPP広報委員長
松永幸大
回答日:2014-07-03
松永幸大
回答日:2014-07-03