一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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砂糖と塩が水に溶けるそれぞれの理由

質問者:   その他   飯田
登録番号0308   登録日:2005-07-13
はじめまして。こんな初歩的な質問をしてごめんなさい。
かなり化学が苦手なんです。
砂糖と塩が水に溶けるそれぞれの理由を化学結合の観点から知りたいのです。
水によく溶ける、しか説明がどこにも載ってないもので。

もうひとつ、ベンゼンはなぜ水にほとんど溶けないのに、グルコースはなぜ水によく溶けるのか、も知りたいです。
よくばって2つもごめんなさい。よろしくお願いします。
飯田さん
これは化学の問題ですが、物質が水に溶けるという現象は生物にとっても大切なことです。大学の生物学や生化学の教科書なら大体のことは書かれていると思いますが、簡単に説明しましょう。質問者は理系でない大学生の方というつもりで回答します。
 水分子は一個の酸素原子と二個の水素原子とからできていますが、水素原子は弱く正に荷電し、酸素原子は弱く負に荷電しています。したがって、水分子同士は、それぞれの酸素と水素との間で、水素結合という弱い結合で引き合っています。すなわち、酸素は別の水分子の水素との間に水素結合で結ばれています。水素結合はとても弱いので、色々な条件で切れたりしますが、通常の水の状態では一水分子は平均3.4 個の他の水分子と水素結合をつくっています。
 このように、水分子は正と負の荷電を同一分子内に持つ2極性を示します。生物の生命活動が成り立つのもこの特異な水の性質によるといってよいでしょう。
 ところで、物質には水に溶け易いものと、溶けにくい又は溶けないものがあります。溶け易い物質は極性物質と呼ばれ、そうでない物質は非極性物質といいます。極性物質は分子構造の中に荷電する基を含んでいます。例えば、カルボキシル基(-COO-)、アミノ基(-NH2/-NH3+)、水酸基(-OH)、アルデヒド基(-CHO)等々がそうです。勿論極性物質でも分子構造の一部は非極性ですから、極性の基があっても非極性の部分が多いと水には溶けにくくなります。極性物質は水の中では荷電したこれらの極性基と水分子との間に水素結合を作って存在します。それが、水が物質を溶かす一つの仕方です。グルコースも砂糖(スクロース、グルコースとフラクトースが結合した二糖類)も、それらの構造を見てみると(化学の本を見て下さい)、-OH基が多くあるのが分かります。
だから水に溶け易いのです。これに反してベンゼン(構造はやはり化学の本を見て下さい)は炭素原子と水素原子だけで極性基は含まれていません。このような炭素と水素だけからなる化合物は炭化水素とよばれ非極性です。だから、水には溶けません。
 もう一つ水に可溶性の物質があります。それは食塩(NaCl)のような一対のイオンがイオン結合している化合物です。イオン結合している化合物は、水の中では正のイオンと負のイオンに分かれ(解離し)易くなります。NaClを例にとると、NaCl → (Na+) + (Cl-)という解離をします。そしてそれぞれのイオンは水分子で取り囲まれることになります。水分子の形はカエデ(モミジ)の種子のようだと思って下さい。丸い種子の部分が酸素で、二つの羽が水素だとします。二つの羽の角度は104.5度です。Na+の廻りには酸素原子(負に荷電している)が向き合うようにして多数の水分子が引き付けられて、水の外套膜のようなものができます。Cl-の廻りには水素原子(正に荷電している)が向き合うようにして膜をつくります。いオン結合している他の塩類も同じです。
 以上大雑把に説明しましたが、この説明をもとに、もう一度化学の参考書あるいは生化学の参考書をひもといてみてください。
 
JSPPサイエンスアドバイザー
 勝見 允行
回答日:2009-07-03
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