一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉緑体が消えることはありますか?

質問者:   大学生   yuki
登録番号3091   登録日:2014-07-07
はじめまして。
私は今ヒョウタンゴケを寒天培地上で無菌培養しています。
知識が浅く手当たり次第なのですが、胞子を培地上に蒔いた際は原糸体が発生し成長がみられました。
そこで、得られた原糸体を回収し、乾燥させ重量を計ったのち、滅菌水を加え乳鉢ですりつぶし、培地上に蒔きました。
滅菌水を加え、培地に蒔いた原糸体は、薄緑色の液体でした。
培地は25℃インキュベーターで、24h蛍光灯で照らしながら培養しました。
3日後観察してみると、透明〜白の細かい糸状のものが培地に張り付いていました。その形はたいへん胞子から蒔いた時に発生した原糸体に似ています。
しかし、色は緑ではありません。ところどころスポットで緑色の部分もありますが、大部分が透明〜白色です。
はじめは葉緑体があったと思うのに、なぜ、透明になってしまったのでしょうか?
yuki様

ご質問どうも有難うございます。
コケの研究をされている熊本大学大学院自然科学研究科の高野博嘉先生に御回答頂きました。


ご質問の内容だけでは正確なことはわかりませんが、色々と可能性を考えてみました。

まず、一つ目の可能性ですが、何らかのカビの混入です。光を当てて育てている状態で、色が白色になることはありません。気になるのは、「原糸体を回収し、乾燥させたのち、すりつぶして、蒔いた」というところで、このときの操作が無菌的に行われてなかったため、もしくは無菌操作をしていたが意図せずに、カビが混入してしまった可能性があります。顕微鏡があれば、実際の細胞を観察してみるのがいいかと思います。カビの菌糸は原糸体よりかなり小さく、また葉緑体がないのですぐに見分けがつくと思います。

二つ目の可能性は、無菌操作が正確に行われていたが、細胞が死んでしまっている可能性です。コケの培養を行うときに破砕継代することはよく行われていますが、あまりに破砕しすぎて細胞が完全に壊れてしまうと、死んでしまいます。死んでしまった細胞が、その後培地上で干涸びて糸状に見えた、ということかもしれません。ちなみに破砕直後は細胞内から出てきた葉緑体で緑に見えると思います。この場合は、カビの混入はありませんので、そのまま培養を続ければ一部の緑のところから原糸体が成長していくものと思います。この場合でも、細胞が死んでいるかどうかは、顕微鏡で観察してみればわかるかと思います。

緑色に広がっていくコケを培養するのは楽しいものです。
今後ともいろいろなコケを培養してみてください。

高野博嘉(熊本大学大学院自然科学研究科)
JSPP広報委員長
松永幸大
回答日:2014-07-14
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