一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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葉っぱの先はなぜ尖っているのか

質問者:   その他   ゆさごん
登録番号3105   登録日:2014-07-31
4歳の娘を持つ母です。
娘が葉っぱを見ていて疑問に思った事を図書館なりで調べましたが、明確な答えに行きつくことができずご質問させて頂きました。

疑問点は、
『葉っぱの多くが、真ん中が太く、先に行くにつれ細くなります。なぜ先端部分は細くなっているのか』

という点です。

娘の予想は
①『パンダが食べやすいため細くなっている』
②『種が細いと細くなる』

でした。

私自身は、葉っぱの重さを支えるための構造ではないかなと考えています。


娘の予想はいかがでしょうか。それと同時に4歳にも分かりやすい正しい答えを教えて頂けますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
ゆさごんさん

 みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問を葉っぱの形のご研究をなさっておられる東京大学の塚谷先生にお願いしました所、以下の様な回答をお寄せ下さいました。お母様が細胞分裂などについて勉強なさって、娘さんに説明してあげて下さい。


塚谷先生からのご回答
 なぜ葉の先が尖っているか、ですね。これは葉ができる仕組みに依っています。
 葉は、最初、本当に少数の細胞だけで形作りが開始します。それもそのはず、茎の先端にあって、新しい葉を生み出す分裂組織も、たかだか数百個から数千個程度の細胞しか持っていませんから、初めからそうたくさんの細胞を送り込むわけに行きません。
 葉は、その少数の細胞を元手に、細胞分裂を繰り返して次第に大きくなりますが、やがて細胞分裂を繰り返す場所を、葉の根元に限るようになります。するとこれまでにできた細胞は順繰りに先の方に押しやられていきます。根元の方ではどんどん細胞を増やしていきますから、次第に葉を作る場は広くなっていきます。
 そうです、葉の先が細くて次第に太くなっていくのは、葉を作る細胞分裂が、根元で起きているためです。そのために、先の方ほど当初の少数の細胞だけでできているので細く、次第に細胞分裂の結果として広くなっていくのです。それがまた根元に向けて細くなっていくのは、これは、葉を作るという作業も、いつかは止めないといけないからです。
 ただし、細胞分裂が活発になったり静まったりといった変化をあまりしない植物もいます。イネ科の植物がその好例です。イネ科の葉は、イネでもススキでも、リボン状でほとんど同じ幅のまま長くできあがっていますね。あれは葉がある幅まで到達したところで、根元の細胞分裂を一定の状態で保っているからです。
 では、葉を作るための細胞分裂が、葉の根元ではなくて先端にあるとどうなるでしょう?葉は先に行くほど広くなるはずですよね。そういう葉、思いつきませんか。
 そうです、イチョウの葉がそれです。
 仰られるように、葉の重さを支える構造としても、葉の形の制約はありますが、それはむしろ主脈の太さなど別の側面で植物は対処しているようです。
 以上が回答になりますが、細胞分裂というところは、そのままでは4歳のお子さんにはピンとこないでしょうね。まずは前段として、生き物が大きくなるためには細胞が倍、倍に増えていくことが必要なのだ、ということをまずは説明してあげてみてください。
 なお2つのお子さんの答のうち、パンダは残念ながらはずれですね。パンダが食べる種類は、地球上の莫大な種数の植物から見たらほんのわずかですし、植物からすれば食べやすい葉を持っていたら絶滅してしまいますから、食べにくい葉の方が好ましいはずです。
 タネの形は、ある程度関連性がありますが、これもタネの中に予めできている双葉に限ります。朝顔でもそうであるように、双葉の形と本場の形が異なることのほうが多いので、タネの形は本葉の形とは関係がありません。またイネの葉は細いですが、タネはあまり細くないですよね。
 そのほかも、折角ですのでこの機会に、いろいろ自由な発想で考えてみてもらえればと思います。

塚谷 裕一(東京大学・大学院理学系研究科・教授)
JSPPサイエンス・アドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2014-08-06