一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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場の植物学の存在

質問者:   大学生   佐藤 俊裕
登録番号3108   登録日:2014-08-01
バイオDIYとして場の植物学の研究をしたいと考えています。その研究内容が現在存在するものなのかが分からないので質問しました。場の植物学とは、簡単に言うと、ぶどうとリンゴを近くで育てると、似てくるのではないか、ということです。近くにいるものは、異質であれば似てくると思います。それは長い時間をかけて、似てくるんでしょうが、生存が危ぶまれる状況で、隣の植物がその生存を回避出来る能力を持っていたとしたら、その能力を持ち得るのではないかと思います。温度に強い植物が隣にあって温度をあげると、温度に弱い植物が隣のその力を得ようとするのではないかと思います。こういった研究があるかどうかを教えてください。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「場の植物学」との表現はあまり聞きませんが、植物に限らず生物の発生においては個体内の「場」、つまりある細胞が周囲にある細胞群から何らかの影響を受けるような場合、その細胞は「場」の影響を受けると表現しています。また、地球上には重力場、磁場、電場、明暗などの「場」があります。植物生長現象に対する磁場、電場の影響については議論のあるところですが、重力場や明暗の場(光の方向を含む)についてははっきりとした研究があります(重力屈性、光屈性、体内時計の研究)。最近では、湿度勾配の場を感知して応答する現象(水屈性)の研究もたいへん進んでいます。
ご質問にある「場」とは群落内での異種植物種どうしが作る状況を「場」ととらえるかなり限定した状況を考えられているようです。例に挙げられているような「ぶどうとリンゴを近くで育てると、似てくる」とか「温度に強い植物が隣にあって温度をあげると、温度に弱い植物が隣のその力を得ようとする」ような現象は知られておりません。しかし、近隣の植物が影響を及ぼす現象はアレロパシー(他感作用)と言ってよく知られています。このコーナーで「アレロパシー」をキーワードとすると似たような質問がいくつか出てきますので参考になさってください。アレロパシーはある植物種が体外に出す(根からの排出や葉などから揮発)化学物質によって近隣の植物の生長に影響を及ぼす現象です。化学物質を出す植物種の形状に、影響を受けた植物個体が似てくるわけではありません。
少し視点は違いますが、近縁の植物種が混稙していると交配がおきて、その子孫に両親のどちらかと似た植物が出来ることはあります。これは交配による遺伝子の組み換えの結果ですから「場」の影響ではありません。私どもの知る限りご質問が意味する「場の植物学」という領域は今のところないと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2014-08-05
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