一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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タンポポの綿毛の飛行距離

質問者:   会社員   さちこ
登録番号3117   登録日:2014-08-07
タンポポの種子は、種類によって重さ、冠毛の量、冠毛柄の長さが違うため、種類によって飛行距離にも違いがありますよね。

ですが、その飛行距離はだいたい平均してどれくらいなのか、どれくらいの距離を移動できるのか、調べても調べてもでてきません。
もちろん、天気や風量、条件によって様々で、平均をだすことはおろか、飛行距離の調べ方も難しいということは承知していますが、もしも、ご存知でしたら教えてください。
よろしくお願いいたします。
さちこ様
 みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。タンポポのことならこの人以外にないと思った方に回答をお願いしたのですが、さちこ様のご存知のかたでした。すでにご存知の内容かも知れませんが、お送りします。


回答は、わからないというのが正確でしょう。
 綿毛(たね)が飛ぶ距離を正確に測った人はいないでしょう。 種類による違いを、一定の高さのガラス管の中を落ちる綿毛の時間の比較で表すことは行われています。その差は数倍といったものではなく、1.3倍とかの違いです。その飛行距離は、風(気流)次第なので、予測できません。綿毛の落下時間の差は、この予測できない気流に乗る可能性の違いと思ってください。滞空時間が長いほど、風に乗るチャンスが多いということです。たねを含めた綿毛は、風に飛ぶ形をしていますので、上昇気流に乗れば、かなり遠くに飛ぶと考えることができます。しかし、セイヨウタンポポが綿毛をヨーロッパから日本まで飛ばしたということはなかったようです。
 山奥にも外来種のセイヨウタンポポが生育していることがあるので、もっとも近い生育地まで数キロメートル あるだろうと見られます。もっとも、人や動物の体について移動したとの可能性を否定はできません。また、山奥で見つけたというのも、結果であって、過去に途中の地点まで来ていた時期があったかもしれません。
 もちろん氷河を避けてもっと長距離を移動したと推測される種類もありますが、それは1年や5年ではない、長い時間をかけて少しずつ移動したのでしょう。
 一つ一つの綿毛が同じ距離を飛ぶこともほとんどあり得ないので、平均値を求めるのは、さらに難しい質問です。一つ一つの綿毛の飛ぶ距離がわからなければ、平均値は出せません。ちなみに最小値は親の直下に落ちた、飛行距離0mの綿毛です。
 広い室内で扇風機の前に綿毛を置いたとき、10m以上移動したのを 見たことがありますが、これも野外の風とは異なる条件でしょう。というわけで、お問い合わせに対して、数値での解答はできません。

小川 潔(東京学芸大学)
JSPPサイエンス・アドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2014-08-19
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