一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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種無しスイカの果実はなぜ大きくなるのですか?

質問者:   教員   まっちゃん
登録番号3124   登録日:2014-08-13
高校で生物を教えています。植物ホルモンの授業では、「子房が成長するのは種子からオーキシンやジベレリンが分泌されているから」と教えていたのですが、では、種無しスイカはどうやって子房を大きくさせているのでしょうか?
資料集を見ると、「受粉すると子房が刺激されて果実になる」とありますが、これはどういう仕組みなのでしょうか??受粉によって、何らかのホルモンが作用しているのでしょうか?  
どうぞよろしくお願いいたします。
まっちゃん さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
二つのご質問がありますね。
種なしスイカの染色体が3倍体であることはご存知と思います。第一のご質問の答えはこのコーナーの登録番号0518に分かりやすく解説されています。ご参考になさってください。
第二のご質問は一言では説明できない面がありますが、花粉(あるいは花粉管)と柱頭(あるいは花柱)細胞間に親和性があれば、花粉細胞と柱頭細胞との間にある種の信号が発生し,その信号が子房に伝わって子房の肥大成長を促すとされています。子房の肥大を促す信号の1つに植物ホルモンがあります。オーキシン、ジベレリン、サイトカイニンなどが増加して子房内の細胞分裂を促進し子房は膨大し始めます。しかし、子房の細胞分裂の開始には受精が必ずしも必要でないようです。花粉による刺激(信号発生)だけでも植物ホルモンの合成が促進され子房の膨大が始まる場合が多くあります。種無しスイカの場合はこの例です。オーキシンやジベレリンを適切な時期に外から与えると、受粉、受精なしで子房が膨大し果実が出来ることもあり、これらも種無しになります(種無しブドウやトマトの単為結果)。子房の細胞分裂はある時期には止まり、その後はできた細胞の肥大成長が始まり果実は目に見えて大きくなっていきます。この頃には、種子形成も盛んになり、各種の植物ホルモンが大量に合成され胚自体の形作りに働くとともに、種子から外に出て果皮や花托の肥大成長つまり果実の成長に大きな役割を果たしているとされています。また、花枝にまで送られて翌年の花芽形成に働くこともあるとされています。
果実形成は、細胞分裂期、肥大期(成長期)、成熟期と段階的になっていますが、それらの仕組みはまだわからないことが多くあります。近年になってトマトやいくつかの果樹の全ゲノム解析もできていますので、近い将来には受粉、受精などが引き起こす果実形成の仕組みが分子レベルで逐次解明されていくと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2014-08-19
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