一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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閉じたオジギソウがゆっくり開く理由+明るさの見分け方

質問者:   小学生   オジギソウかわいい
登録番号3136   登録日:2014-08-24
こんにちは。小学校の自由研究でオジギソウの研究をしています。
質問が2つあります。

1)しげきを受けてすばやく閉じた葉が、30分くらいしないと開きません。
(開くまでの時間をはかる実験もして確認しました)
水の移動によって閉じた葉は、また水が元に戻って開くのだとおもうのですが、なぜ開くときだけ時間がかかるのでしょうか。

2)昼間、明るいところで、突然暗くしたら、2時かほどで葉が閉じました。明るさ(暗さ)を感じていると考えますが、熱や触られたという刺激とは違って、どうやって明るさを感じているのでしょうか。また暗くしてすぐに閉じずに2時間ほどかかったのは、光でうけるしげきが葉の中にのこっていたのでしょうか。

植物園の相談会でもきいてみたのですが、わからない、といわれたので、こちらで質問させていただきました。よろしくお願いします。
オジギソウかわいい さん

ご質問をありがとうございました。この質問には、上智大学の神澤 信行先生が詳しい回答文をご用意くださいました。ご参考になさってください。なお、本コーナーには登録番号821、947など、関連するQ/Aがありますので、そちらの方もご参考になさってください。

(神澤先生からの回答)
先ず、1つ目の質問に関してです。なぜ、戻る時には時間がかかるのかという問題です。オジギソウを触った時に水が動くと言うことは勉強されているようですね。オジギソウの葉や枝の付け根にはコブの様に膨らんだ部分があります。この部分を葉枕(ようちん)と呼び、その中にはオジギソウの葉が動くための特別な細胞があります。
オジギソウを触るとこの細胞から水が出て、細胞が少しだけ縮みます。ひとつひとつの細胞は小さいですが、沢山の細胞が同時に縮む事で、皆さんが見ているような目に見える運動になります。細胞から水が出るためにはもう1つ大事な事があります。それは水よりも先に細胞から「イオン」が細胞の外に出るということです。オジギソウの葉が閉じる時には、このイオンが細胞の外に一気に流れ出ます。それにつられて水も細胞の外に出るのです。オジギソウが元に戻ろうとする時には細胞の外に出たイオンをもう一度細胞の中に戻す必要があります。イオンが細胞の中にたまってくると、水も後から細胞の中に戻ってくるわけです。
さて、細胞からイオンが出るときにはエネルギーは必要ないですが、イオンを細胞の中に戻すためにはエネルギーが必要だと考えられています。そのために戻る時には時間が必要となります。ちょうど膨らませた風船の口から一気に空気が出た後に、元の大きさまで空気入れで膨らませるのには時間がかかるのと似ています。オジギソウの葉が元に戻るときには光合成も関係すると考えられています。ですから、植物が戻るまでの時間は光の量や周りの温度が大事になってきます。実際に様々な条件で戻るまでの時間を調べるとおもしろいかもしれません。 

2つ目の質問に関してです。オジギソウが光をどうやって感じているかという問題です。大変難しい質問です。光の話の前に、「時差ぼけ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。私たちの体の中には体内時計があり、およそ24時間周期のリズムを持っています。ですから、せっかく海外旅行に行っても昼間から眠くて仕方ないという様な事になってしまいます。時差ぼけは周りの時間と体内の時間がずれてしまった時に起こるのです。実はこの体内時計が見つかるきっかけになったのがオジギソウなのです。つまりオジギソウにも人と同じ様に体内時計があり、およそ24時間周期のリズムを持っています。普通に育てたオジギソウを真っ暗な所に置いても、しばらくは24周期で葉を閉じたり開いたりする事が知られています。しかし、光を受けないとこの24時間周期の体内時計は少しずつずれてしまいます。このようにオジギソウが何時に葉を開き閉じるかは、体内時計と光を受けると言うことが大事になります。これ以外にも色々な事が関係してきます。
今回の実験では昼間に突然暗くして2時間ほどで葉が閉じたと言うことですが、本来なら暗くしても葉が閉じるまでの時間は、外に置いておいた時とあまり変わらないはずです。つまり、色々な影響が複雑に関係している可能性があります。例えば温度の変化はどうでしょうか。光をあて始めてから暗くするまでの時間はどの位だったでしょうか。いくつかの条件で追加実験をしてみると良いかもしれません。
さて、オジギソウがどの様に光を感じているかですが、オジギソウに限らず植物には光を感じる「目」があります。オジギソウでも「フィトクロム」と「フォトトロピン」というタンパク質が光を感じる目の役割をしていると考えられています。フィトクロムとフォトトロピンに付いては植物生理学会の市民講座や質問コーナーで多数説明されています。その一例を下に書きます。

市民講座 「植物科学をもっと楽しもう―サイエンスライブ ―2009―」
「植物の目はどんな目」 (徳富 先生)
市民講座 「植物科学をもっと楽しもう ―2003―」
「植物の目、植物も周りを見ている」 (和田 先生)

しかし、オジギソウが光を感じた後にどの様にして葉を閉じたり開いたりするのか、細かいことは分かっていません。これからの課題となっています。

以上、良い夏休みの宿題に成りますように。

神澤 信行 (上智大学理工学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2014-08-27