一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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カボチャの花粉管

質問者:   教員   理科教員
登録番号3139   登録日:2014-08-28
 理科の授業で花粉管が伸びる様子を見せて子どもたちに植物のすごさを感じてほしいなと考えました。身近で教科書にも使われているカボチャを使って見せたいなと考え実験を行いましたがなかなかうまくいきません。
 また、10%の砂糖水で見ていると、伸びているのか破裂しているのかわからない物もありました。花粉が破裂するということも多くあるのでしょうか?
 朝に行うとよいという条件以外に、カボチャの花粉管が伸びる発芽率や、のびる様子を観察する良い方法はないでしょうか?教えてくださいよろしくお願いします。
理科教員様

培地上での花粉管発芽には、主に生物材料の状態、培地の組成、物理化学的な条件が大きな影響を与えます。カボチャの場合には、ご指摘のとおり、朝に開花してから数時間も経つと、発芽率が大きく減少してしまうようです。開花直後の花粉の発芽率が高いという性質は、他にもイネでよく知られます。

生物材料に関する他のポイントとしましては、植物の生育状態や、遺伝的な背景も挙げられます。稔性をもつ花粉であるか、人工受粉で確認しておくのも一つの方法です。

培地の組成は植物種に依存しますが、一般にショ糖、カルシウム、ホウ素に伸長促進効果があるとされます。ショ糖は、花粉管伸長の際の炭素源になるとされると同時に、花粉管伸長のための最適な浸透圧を与えるものとされています。最適な浸透圧が植物種によって異なるため、ショ糖濃度の検討が必要です。その他に、カルシウムを硝酸塩で300 mg/l、ホウ酸を100 mg/l程度与えるといいかと思います。これらは、花粉管伸長を促進しますし、見た目の発芽率の向上も期待できます。物理化学的な条件としましては、温度、湿度などが大きく影響します。培地を液体のまま使うのか、または寒天などで固めて使うのか、寒天の場合にどれくらい湿った状態にするのかなど、検討が必要です。液体培地の場合には、花粉の密度効果(花粉の密度が上がると発芽率が上がる)も大きく影響しますので、注意が必要です。カボチャ属の場合には、pHが影響するという知見もあります。最適なpHは種によって異なるようで、検討が必要です。花粉管を伸長させる培地のpHは調整しないことが多いですが、もし調整する場合は、加える酸・塩基にも注意が必要です。硫酸、水酸化カリウムなどを用います。ナトリウム塩は花粉管伸長を著しく阻害することが多いです。

以上のように、花粉管を培地上で効率よく発芽・伸長させるには、様々な条件が合う必要があります。また、植部種による違いも、とても大きいです。培地上で花粉が発芽しやすい植物、しにくい植物があります。カボチャの花粉を扱った経験はございませんので、どの程度カボチャの花粉管を伸ばすことが難しいかはわかりません。カボチャ属の花粉管伸長データを含む論文は多く見られますが、実習用に様々な植物を試してみられるといいと思います。
JSPP広報委員
東山 哲也
回答日:2014-11-07
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