一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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カツラの甘い香り

質問者:   会社員   Mt.moiwa
登録番号3148   登録日:2014-09-16
先日、カツラの生垣の横を通ったら、甘い香りがするのです。カツラの香りは新葉のころでも落葉時でも、ときどき出会うのですが、そのときは、鼻腔を抜ける程度、一瞬、その甘い香りを嗅ぐ(感じる)程度なのですが、今回の生垣の場合、祭りの夜店で匂ってくる綿菓子のにおいというか、それくらいインパクトのある香りがしたのです。
よく見ると、その生垣は最近(2〜3日前?)に剪定されたようです。
それが原因で、強い甘さが漂っていたのか?と考えたのですが、正しいのでしょうか?

スギやヒノキは枝を切られるとヤニが出てきます。それは、傷口を防ぎ、菌などの外敵から体を守るためですが、今回のカツラの場合も、剪定で切られた切り口を守るために出された物質なのでしょうか?
この物質が何か?と調べると、マルトース、水あめの主成分ということです。甘い香りがこれあることは解ったのですが、このマルトースに樹木を守る防御物質としての働きがあるのでしょうか?
よろしくお願いします。
Mt.Moiwa さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
カツラが甘い香り、キャラメルの香りを出すことは広く知られています。葉を乾燥させ粉末状にしたものは香のもとにも使われるとの記載もあります。カツラに含まれる香りの原因物質はマルトース(2糖)ではなくマルトールというピロン環をもった物質です。独特の香り、甘味を助ける働きがあり多くの食品に添加されているようです。カツラばかりでなくかなり多くの植物に含まれており、朝鮮人参やモミを含む針葉樹にも含まれていることが報告されています。
幾つかの研究結果をまとめてみると、カツラの緑葉には少なく、黄葉、紅葉となるにつれて含量が多くなります。葉が老化段階に入ったり、乾燥したりすると増加するようです。材(茎)にはきわめて少ないようです。マルトールが代謝過程で生合成されるかどうかは明らかでありません。細胞が弱ったり、死んだりして細胞内の成分局在の区切りが壊れた後に起こる成分間の化学反応によって生成される可能性が指摘されています。その理由は、マルトース(麦芽糖、ブドウ糖が2個つながった糖)を加熱するとマルトールが生成されること、ブドウ糖のような単糖だけでは加熱しても生成しないが、アミノ酸などが共存すると生成されるからです。しかしカツラ以外の多くの植物種にも量の多寡を問わなければ含まれていますので生合成代謝過程がある可能性は否定できません。遺伝子解析などから偶然に生合成酵素が見つかるかもしれません。したがって、マルトールが植物側でどのような働きをしているのか現段階では明らかでありません。
但し、マルトールの薬効(抗酸化作用など)についての研究はかなり多くあります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2014-09-17
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