一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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トマトに含まれる色素(クロロフィルやリコペン)について

質問者:   大学院生   ユウ
登録番号3151   登録日:2014-09-17
トマトから有機溶媒で色素を分離したものを光遮断し、冷凍と常温に分けて保存すると冷凍保存では変化は少ないのですが、常温保存の方は溶液の量が少し少なくなり、縮合したのか、見た目も濃く、クロロフィルやリコペンなどの量が増えたように感じます。さらに蛍光スペクトルを調べると670nm付近のクロロフィルピークが少しレッドシフトしておりました。

質問させていただきたいのは、今回の抽出方法ではクロロフィルa,bが含まれるはずなのですが、たんぱく質から分離した場合、その量が保存方により変化したり、a,bの比率が変化したり、たんぱく質と結合した色素とし存在する場合と光反応性が変化したりするのでしょうか。

電気電子系の研究室のため植物の知識に疎く質問させていただきました。
よろしくお願いします。
ユウ 様

本コーナーに質問をお寄せ下さりありがとうございます。
有機溶媒で抽出された色素を遮光して常温で保存すると、(1)溶液量が減少し、(2)色素の濃度が高まったように見え、(3)クロロフィル蛍光の発光極大が長波長にシフトしたとのことですね。
先ず、ご質問の部分についてお答えします。緑葉中(生体内)にあってタンパク質に結合した状態のクロロフィルは、日中の強い光に照らされても分解されることなく安定に存在します。しかし、有機溶媒に抽出された状態ではクロロフィルは光反応性に富んでおり、条件によりますが、短時間で分解され退色してしまいます。この反応は酸素や温度に依存し、反応性はクロロフィルaとクロロフィルbで違うと思います。
実験にどのような有機溶媒を用いられたか分かりませんが、(1)溶液量の減少は、溶質の“縮合(?)”によるよりは、溶媒の蒸発に由来し、(2)色素の濃度が高まったように見えるのは、(1)の結果である可能性はありませんか。なお、溶媒条件によってはクロロフィルが会合体をつくるため吸収や蛍光発光のスペクトルに変化が生ずることで色調が変わることがあると思います。
植物色素を用いる有機EL作製の研究をされている方には、物足りない回答になったかも知れませんので、下記の邦書をまとまった記述となっている参考書として挙げさせていただきます。

(記)
「クロロフィル-構造・反応・機能-」三室 守編(裳華房)
「カロテノイド-その多様性と生理活性-」高市真一編(裳華房)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2014-09-19
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