一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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夏季の呼吸について

質問者:   自営業   根本
登録番号3152   登録日:2014-09-21
チンゲンサイをハウスで栽培しています。

夏になると、チンゲンサイが大きくならず、
しかも外側の葉からだんだん黄色になってしまいます。

夏は高温のため夜の呼吸量が増えてしまうことが原因ではないかと考えております。

昼は光が強いので炭水化物の生産量も多いですが、
夜は気温が高いため春や秋に比べ呼吸量が多くなってしまっているのではないかと思います。

このために植物は炭素を含む物質を外側の古い葉から、
内側の新しい葉に送ってしまい、その結果として外側の葉が黄色くなってしまうのではないでしょうか。

もし呼吸量の増大が黄色化の原因だとしたら、
植物の呼吸量を制限する方法はないでしょうか。
根本 様

ご質問をありがとうございました。この質問には、植物の呼吸についてお詳しい東京大学の野口 航 先生が回答文をご用意下さいましたので、参考になさって下さい。

(野口先生の回答)
チンゲンサイが高温に弱いことは、以下の報告にも書かれてありました。
月時和隆・山本幸彦・渡辺幸恵 (1996) 夏秋季採りチンゲンサイの生育に及ぼす温度,遮光の影響 福岡農試研報15
http://farc.pref.fukuoka.jp/farc/kenpo/kenpo-15/15-12.htm。この報告でも、夜の呼吸量が生育不良の原因の可能性があると書かれてあります。植物の呼吸量は、生育温度で大きく変わりますし、植物種によって、温度に対する変化(温度依存性)が異なります。チンゲンサイでは比較的高くない温度でも、急に呼吸量があがるのだろうと思われます。

ところで、呼吸量を下げる方法ですが、私が知っている限りは思いつきません。呼吸系の阻害剤を使えば、呼吸量は下がりますが、人にも毒性があり、使用できません。
呼吸系からつくりだされるATPエネルギーの需要が高いときには、植物の呼吸量は上がります。高温に弱い植物では、温度が上がると、細胞を構成するタンパク質などの分解が速くなります。そのため、タンパク質合成もさかんになり、タンパク質合成・分解のためのATPエネルギー需要があがります。私たちの研究室でも以前、高温に比較的弱いペチュニアの花弁を35度で栽培すると、25度にくらべて花弁の寿命が短くなり、呼吸量があがること、タンパク質合成・分解がさかんになることを報告しております。葉には花弁よりもより多くのタンパク質が含まれていますので、チンゲンサイの葉でも同じようなことが起こっている可能性があります。

野口 航(東京大・理)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2014-10-07
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