一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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オーキシンの水溶性について

質問者:   高校生   そねちゃん
登録番号3165   登録日:2014-10-28
生物の参考書にオーキシンは水に溶けると書いてありました。
ですが、代表的な天然オーキシンである、インドール酢酸について調べると、水に難溶という記述を見つけました。
たしかに、インドール酢酸の構造式を見ても、水に溶けるとは思えません。
これはどういうことなのでしょうか?
そねちゃん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
ある物質が水に可溶であるとか難溶であるとかいいますが、実際に水に溶ける得る量でその性質を示している訳ではありません。温度によっても変わってきます。水の温度が高ければ溶ける量も多くなります。文献によって異なりますが、インドール酢酸(indole-3-acetic acid) の場合は8g/lから1.5g/l (20℃)という記載がみられます。これは水に溶け易いのか溶け難いというのかわかりません。また、本当にこれだけの量が溶けるのかどうか試したことがないので確答はできません。長い時間をかけてゆっくり溶かせば溶けるのかもしれません。難容という表現は溶けるには溶けるがなかなか溶け難いと言うふうにも理解できます。しかし、生物実験関係では水に少ししか溶けない(very slightly soluble)と書いてるのは普通です。実際に植物ホルモンとして水溶液を作る場合は、10mg/l 程度の濃度でも、ごく少量のKOHの溶液に溶かしてから(K塩になる)水を加えて希釈し、ほぼ中性まで酸(塩酸溶液など)で中和したりします。あるいは、ごく少量のエタノールかアセトンに溶かして(これらの有機溶媒にはよく溶ける)から水に拡散させてインドール酢酸の溶液を調製します。場合によっては遊離のインドール酢酸の結晶ではなくインドール酢酸カリウム塩 (Potassium inodle-3-acetate)を使うこともあります。これだと水溶性と言ってよいでしょう。
というわけで、インドール酢酸は水には溶け難いというのでよろしいかと思います。
JSPPサイエンス・アドバイザー
勝見 允行
回答日:2014-11-05