一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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紅葉で、日が当たらない部分が黄色くなるのは、カロチノイドの分解がクロロフィルの分解より遅れて行われるからですか?

質問者:   教員   にゃお
登録番号3171   登録日:2014-11-06
最新の生物の図説に、紅葉と黄葉のメカニズムが載っていました。

そちらには、アントシアンの合成と共にクロロフィルとカロチノイドが分解されるので、赤くなると書いてありました。

また、黄葉は、カロチノイドの分解がクロロフィルの分解より遅れて行われるために、黄色くなると書いてありました。

アントシアンは、光合成産物である糖からつくられるために、日によく当たっていた部分は赤くなるのだろうと考えました。

しかし、日に当たらなかった部分が黄色くなる理由がどこにも明記されていませんでした。

やはり、黄葉と同様、カロチノイドの分解が、クロロフィルの分解より遅れて行われるためなのでしょうか。
にゃお 様

ご質問をありがとうございます。

落葉に先立って起こる紅葉化や黄葉化の仕組みについての図説の記述は妥当なものだと思います。

赤色の原因となる色素アントシアニンが組織を越えて輸送されることはないので、色素(アントシアニン)合成の活性が低い葉がクロロフィルとカロテノイドの分解速度の差により黄葉化しているものと考えられます。アントシアニン合成には光が関与し、その有効波長は光合成の場合とは大きく異なっていることが知られています。光合成産物がアントシアニン合成の素材になるのは確かだとしても、産物の蓄積量の多い葉が紅葉化が早い訳ではないようです。日が当たりにくい部分においては、分解が遅れるカロテノイドのために黄色化が進むが、その部分が赤色にならないのはアントシアニン合成に必要な光が十分でなかったためであると考えられます。ただし、日当たりが少ないことが原因となる他の生理的な事情によりアントシアニン合成が誘起されなかった可能性を完全に排除することはできないと思います。

なお、本コーナーには紅葉に関する数多くのQ/Aがあり、いろいろな角度からの議論が紹介されておりますので、それらの方もご参考になさって下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2014-11-10