一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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高温でタンパク質の分解と合成がはやくなるのは何故?

質問者:   自営業   根元
登録番号3180   登録日:2014-11-10
 以前に『夏季の呼吸について』登録番号3152 という質問をさせて頂きました。その際に野口先生に、

『高温に弱い植物では、温度が上がると、細胞を構成するタンパク質などの分解が速くなります。そのため、タンパク質合成もさかんになり、タンパク質合成・分解のためのATPエネルギー需要があがります。私たちの研究室でも以前、高温に比較的弱いペチュニアの花弁を35度で栽培すると、25度にくらべて花弁の寿命が短くなり、呼吸量があがること、タンパク質合成・分解がさかんになることを報告しております。葉には花弁よりもより多くのタンパク質が含まれていますので、チンゲンサイの葉でも同じようなことが起こっている可能性があります。』

という回答を頂きました。
何故、高温になるとタンパク質を分解してしまうのでしょうか。
わざわざエネルギーを使って合成したタンパク質を、
分解して、また作り直さなければならないのでしょうか。

植物体内のタンパク質を分解する酵素が、高温になると反応性が
高まり、勝手にタンパク質分解を促進してしまうからなのでしょうか。

また、このような高温による呼吸に必要なエネルギー増大に対して、
葉面散布で直接糖分を与えることによって、
エネルギー不足を解消することはできないのでしょうか。
根元様

ご質問どうも有難うございます。
今回も東京大学大学院理学系研究科・野口航先生に御回答頂きました。


植物種によって、最適な温度は異なります。
チンゲンサイがどのくらいの温度で最適かは存じ上げませんが、高温ではないようです。
高温に適応していないチンゲンサイのような植物では、からだで使われるタンパク質も、高温に弱い場合が多いです。
なぜ高温下で弱くなったり、分解されるかはわかりませんが、比較的低温下でもうまくはたらけるタンパク質は、高温では阻害されたり、分解されたりする場合が多いです。
どの温度でも働けるタンパク質はつくられていないと思います。

葉に糖を散布したら、どうなるかは実験してみないとわかりませんが、呼吸速度を上げたら、成長が良くなるとは限りませんし、葉の表面にいる微生物などのはたらきも活発になり、予想外のことが起こりそうです。

野口 航(東京大学大学院理学系研究科)
JSPP広報委員長
松永幸大
回答日:2014-11-11
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