一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ススキの稈の断面の色

質問者:   一般   チェリーパイ
登録番号3182   登録日:2014-11-12
茅葺職人さんの体験談で、「ススキの切り口が赤いものと白いものの二種類がある」ことを知りました。赤いものは、まるで血のように真っ赤だそうです。自分の家の近くにあるススキ草地(先日、草刈がありました)で確認したところ、ほとんどの切り口が白でした。気になってネット検索してみたところ、確かに、同じ株なのに一部の稈の切り口が真っ赤になっている例がありました。赤くなるのは、なぜでしょうか? 
チェリーパイ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。チェリーパイがお好きですか。私はケーキのパイは大体好きですが、特にルバーブパイが好きです。さて、ご質問の件ですが、確かにススキや茅の茎(悍)の切り口(内部の随の部分)は赤いことがありますね。トウモロコシでも見たような気がします。
植物の組織に赤い色がつくのは一般にポリフェノールとよばれる物質の仲間によるものですが、ススキの赤色はむしろ鮮やかな紅~赤色ですから、植物自身が作るものではないように思われます。おそらくカビの色素だと想像します。この分野のことは植物病理学に関係することなので、詳しいことは分かりませんが、調べた範囲でお答えいたします。植物に着くカビは色々ありますが、なかでもフザリウムと呼ばれる属のカビは数百種もあるといわれ、広く病害をもたらすカビとしてしられています。これらには赤い色素を産生するものもあいます。よく樹木に傷がつくと樹液が流れ出ますが、これが赤く染まることがあります。樹液は栄養に富んでいるので、樹液菌と総称される微生物が繁殖できます。その中に赤い色素を産生するカビ(Fusarium aquaeductuum)が見つかっています。ある研究によればススキから単離したFusarium graminearum という種を培養すると培地の表面に鮮紅色の色素で覆われると報告されています。これらの色素の一部は同定されておりビカベリン(bikaverin)がよく知られています。ビカベリンは化学的にはポリケチド(polyketide)とよばれる一群の化合物の仲間で、やはり同じ仲間のテトラサイクリン系の抗生物質と似たような構造をしています。

勝見 允行(JSPPサイエンス・アドバイザー)
勝見 允行(JSPPサイエンス・アドバイザー)
回答日:2014-11-26
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