一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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気孔での二酸化炭素吸収・酸素の吸収と水蒸気の蒸散について

質問者:   自営業   根本
登録番号3188   登録日:2014-11-29
 気孔では二酸化炭素・酸素の吸収と、水分子が水蒸気として蒸散する2つの役割があると、教科書等で教わりました。
 
 しかしよくよく考えてみると、一つの穴で気体(酸素、二酸化炭素、水蒸気)の吸入と排出を同時に行っているというのは不自然ではないかと思いました。
 
 自分の部屋のなかの空気を入れ替えたいと思ったときは、外気を吸入する側の窓を開けます。そして、部屋の中の空気を外に出すために外気を吸入する窓とは逆側の窓を開けます。
 
 気孔で盛んに蒸散が行われている状態のとき、気孔の穴からは気孔内部から水蒸気がどんどん外へ向かって出てくると思います。その流れに逆らって、外部の二酸化炭素や酸素を含んだ空気が植物内部に吸収されるとはとても考えられません(仮に吸収されたとしても、空気の流れに逆らうので非常に効率が悪いと思います)。

 一つの気孔で吸気と排気を行っているのではなくて、気孔は吸気のみで、排気は別のところで行っているのか。もしくは吸気している気孔と排気している気孔が別々に分布しているのか。お教えください。
根本様

ご質問どうも有難うございました。
気孔の研究をされている名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻の木下俊則先生に御回答頂きました。

松永幸大(JSPP広報委員長)


 植物は気孔を通して、光合成に必要な二酸化炭素の吸収、蒸散や光合成によって生じた酸素の放出などのガス交換を行っておりますが、基本的には拡散(物質が濃度の高いところから低いところへ移動する性質)によってこれらのやり取りは行われており、積極的に排出を行ったり、吸入を行ったりしているわけではありません。
 質問にあります部屋と窓の関係で例えるなら、気孔を開くというのは、部屋の窓を一つ空けるような状況で、効率は悪いですが、部屋内と外の濃度差に依存した物質の移動によりやり取りを行っています。もし、部屋内の湿度が外よりも高く、部屋内の二酸化炭素濃度が外よりも低ければ、水分は外へ出て行き、二酸化炭素は部屋の中に入ってきます。この場合、同時に水分の放出と二酸化炭素の取り込みを行っていることになりますが、拡散による移動の場合は、大きな空気の流れを伴わずに起こりますので、逆方向のやり取りも同時に行えると思われます。実際、葉におけるガス交換は、光合成蒸散測定器という装置を使って測定することができるのですが、葉に光を照射し、気孔が開き、光合成を盛んに行っている時、気孔を介して水分の放出と二酸化炭素の取り込みが同時に行われていることが確認出来ます。
 拡散によるガス交換の効率の悪さを克服する植物側の対策としては、植物種にもよりますが、平均しますと1 mm2あたり100個以上の気孔を持っており、できるだけガス交換を行う窓の数を増やしていること、また、気孔の内側(葉の内部)には気孔腔と呼ばれる空間があり、表面積を増やすことで水の蒸発や細胞への二酸化炭素吸収を少しでも効率よく行えるように工夫しているようです。
名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻
木下俊則
回答日:2014-12-09
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