一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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コナラ等広葉樹の樹皮は剥がれて落ちますか

質問者:   公務員   えんちゃん
登録番号3193   登録日:2014-12-05
原発事故で放射能汚染により、シイタケ栽培の原木としてコナラなどを利用することが厳しく、シイタケ栽培者は原木の確保に苦労している状況です。一方、放射性物質は樹皮に多く含まれていると聞いています。そこで、古くなった樹皮が剥がれ落ちて新しい樹皮に代わるものであれば、コナラなどの放射性物質濃度が低下して、またシイタケ原木として利用できる可能性が出てくるのではないかと考えました。実際このような現象はあるのでしょうか。なお、シイタケ原木として利用するものは樹齢20~50年くらいのものになります。
えんちゃん様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。まずコナラの樹皮の剥離についてお答えします。古い樹皮が剥離して新しい樹皮が出来てくるということはありません。樹木の樹皮はヘビや甲殻類のように脱皮して新しいものと入れ替わるということはしません。ただ、幹が太くなると、樹皮が剥離して剥がれてしまう樹木は沢山あります。 英語で exfoliating bark tree とよばれています。たとえば、カバノキの仲間、スズカケノキ、ユーカリ、サルスベリ、ナツツバキ、リョウブ、カリン、ヤマボウシ、サクラ、カエデの仲間などなど。しかし、これらの剥離する樹皮は外樹皮と呼ばれる一番外側の部分だけです。登録番号1854, 2394, 2528 を読んで下さい。これに対して剥離が全く起こらない樹木も沢山あります。コナラ、クヌギなどの仲間もそれです。とくにコナラなどいわゆるドングリのなる樹は外樹皮の内側にコルク層が発達するので、樹皮は肥厚します。これらの樹の樹皮は全く剥離しないかというとそうでもありません。しかし、その場合は昆虫やカビ、微生物などが原因であるため、樹は衰えて枯れることもあります。
原発事故による放射性物質飛散で樹木が汚染されたことは大きな問題となっていますね。H25年度の森林総研の報告によると、汚染(放射性セシウム)が一番大きいのは落葉層です。樹自体は樹皮も含めて検出される放射能は2011年度にくらべて2012年度は約半分くらいに減少しています。その代わりに土壌に含まれる量がぐっと多くなっています。もしこの傾向がずっと継続するならば、樹自体は樹皮もふくめて放射能は限りなく小さくなっていくのかもしれません。ただ、土壌に蓄積されたセシウムは取り除かない限り長く残存することになってしまいますね。その一部はまた、根から吸収されるかもしれません。
JSPPサイエンス・アドバイザー
勝見 允行
回答日:2014-12-08
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