一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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光屈性

質問者:   高校生   八塚
登録番号0320   登録日:2005-08-01
夏休みに課題研究で、「ヒマワリの光屈性」について実験しました。

家で実験したので正確な実験ではなかったのかもしれませんが、

方法はヒマワリの芽生えに電気スタンドの光を、10cm、20cm、30cmと少しずつ光を離していって光の強さを変えて、光屈性のスピードの違いなどを調べようとしました。
しかし、10cmの場合に1時間程度でけっこう曲がったかと思うと、実験を続けていくと、茎が曲がらずに伸びたり、元に戻ってしまったりしまいました。
また、本葉が出た後に実験をしたら、あまり屈性を示さなくなってしました。

そもそも光の強さによって光屈性のスピードは変わるものなのでしょうか?
八塚 君

 光屈性についてのご質問、この問題について詳しく研究をされている大阪市立大学理学部の飯野盛利教授に以下のような回答を頂きました。これを参考に植物が太陽光を有効に利用するための機構である光屈性の新しい分野にチャレンジして下さい。

光強度と光屈性の関係についてお話します。光が強いほど植物はより強い反応(屈曲)を示します。しかし、ある強度を越えると、かえって反応は低下します。光強度を横軸にとり、反応の強さ(屈曲のスピード、光照射開始から一定時間の屈曲角度など)を縦軸にとってグラフにすると、山型の曲線になります。一般に芽ばえ(胚軸)は光に敏感で、電気スタンドの光で十分に光屈性を示します。直射日光はかえって強すぎて、ほとんど光屈性を示しません。

これまで芽ばえの胚軸を用いて調べられてきた光強度と光屈性の関係から、光屈性は光が不足した環境(光合成が十分に行えない環境)において、より多くの光を捕獲するために役立っていると考えられます。こんど日陰に育つ植物を観察してみてください。一方が明るい場合、そちらに屈曲しているのが観察できるでしょう。また、植物によっては、葉の表面を明るいほうに向けているのが分かるでしょう。

本葉が出て胚軸がもう伸長しなくなると、胚軸の上で伸長している茎が光屈性を示します。このとき、一度曲がった胚軸は立ち上がってくるでしょう。また、本葉が出てから光を当てても、胚軸は光屈性を示しません。これは、光屈性が胚軸や茎の成長が不均等になって起こることによります。成長を終了した胚軸や茎は光屈性を示さなくなるのです。

さて、本葉が展開した後に見られる茎の光屈性は、胚軸の光屈性に比べて、一般に弱いです。しかし、ヒマワリの場合、本葉が展開した後の茎も比較的強い光屈性を示します。また、ヒマワリは直射日光にも反応して、光屈性を示します。ヒマワリは他の植物とは違った光屈性の性質をもっているようです。ところで、光強度と茎の光屈性の関係がどうなっているか、ヒマワリを含め、私たちは十分に理解していません。実は、そのような研究報告がないのです。八塚君は研究者がまだ報告していない研究課題に取り組んでいることになります。

 飯野 盛利(大阪市立大学理学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
 浅田 浩二
回答日:2009-07-03
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