一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

サツキツツジの開花と夜間照明

質問者:   教員   坂本玲子
登録番号3203   登録日:2014-12-17
高校生物部の生徒と共に、近くの街路樹のサツキツツジ(たぶん大盃という品種です)の開花を調べました。桜並木の下で日当たりのよくないところですが、一部だけよく開花しています。調べてみたら、2つの点で街灯の夜間照明と関係がみられました。
一つは、花数です。つぼみから咲き終わったものまで合計した花数は街灯の直下で最も多く、街灯から離れるにつれて少なくなっていました。
もう一つは、開花時期です。最初に調べたときは、街灯直下が満開で、数m離れたところはつぼみが多かったのですが、10日後には、直下はほぼ咲き終わり、少し離れたところが開花期を迎えていました。
夜間照明が花数を多くし、また、開花時期を早めていると考えました。
夜間照明の照度は直下でも20ルクス程度で、日陰とはいえ2000ルクス程度は有る昼に比べれば暗いです。街灯は季節にかかわらず一晩中ついています。
教科書にある光周性のしくみではうまく説明できずにいます。そのメカニズムについて、教えていただきたいと思います。
坂本玲子様

ご質問どうも有難うございます。
名古屋大学大学院理学研究科の中道範人先生に御回答頂きました。

東山哲也(JSPP広報委員)

 非常に興味深い現象だと感じました。
 植物の花が咲くという現象は、2つのステップに分けられます。1つは花芽の形成で、もう1つは花芽の開花です。ツツジは春に花が咲きますが、その時期にすでに出来あがっている花芽のつぼみの休眠が打破され、一斉に開くことで成り立ちます。日本ではツツジの花芽の形成は前年の7から8月ころに見られます。ツツジは短日植物に部類され、日長が夏至のころより短くなったことを認識して花芽形成をしているようです。
 街灯下で花芽の数が多いというのは、この7から8月ころに何らかのことがあったことがうかがえます。現在の知識では、街灯の光がツツジのような短日植物の花芽形成を促すことは理解されていません。もしかしてまだよく分かっていま
せんが、微弱な光は光周性のシグナルとしてではなく、他の作用をもっていて、間接的に花芽数を増やしているのかもしれません。その程度の照度でも、植物の生理機能に何らかの影響を出しているとしたら、興味深いことです。
 もう1つ気をつけた方がいいのは、剪定の具合です。街灯の下では剪定がしにくく、花芽がたくさん残っていたということもありうるかと思います。
 さらに街灯の下は開花が早くなるということですが、それは街灯の光やそれに伴う温度上昇あるいはそれに起因する何かがつぼみを開くところ(開花)を誘導していたと考えられます。ちなみにサクラやウメなど春に花が咲く植物の多くで、ツツジのような生活環(比較的短日条件で花芽形成をし、花芽の状態で越冬し、春につぼみが開く)をしていることが知られています。サクラ(ソメイヨシノ)の花芽は、台風などのストレスや温度上昇によって、つぼみが開いてしまいます。
名古屋学大トランスフォーマティブ生命分子研究所
中道 範人
回答日:2014-12-26
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内