一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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かりんはなぜ加熱すると赤くなるのですか?

質問者:   小学生   かりん
登録番号3204   登録日:2014-12-17
もらったかりんで,ジャムを作りました.
とてもきれいな赤い色になりました.
加熱前は紅くないのに,はなぜ加熱すると赤くなるのですか?
かりんーちゃん

質問コーナーへようこそ。かんげいいたします。カリンのジャム作りに挑戦したのですね。簡単ではなかったでしょう。カリンは生では食べられないし、色もクリーム色っぽいですよね。それがジャムにして煮詰めていくと、本当にきれいな赤色・あかね色になっていくのは驚きですね。そこで、この『色の変化はどうして起きるのかなと疑問に思ったのは素晴らしいことです。何でも不思議だなと思う心はとても大切です。
さて、まず答ですが、残念ながら、はっきりとしたことは分かっていません。外国にはカリンと同じ仲間のマルメロがありますが、外国では昔からマルメロのジャムをつくります。カリンと変わりなく、やはりあざやかな赤色のジャムができます。私もカリンやマルメロジャムの赤い色は気になりましたので、少し調べてみました。小学生のかりんちゃんには難しいかもしれませんので、できるだけやさしく大体のことを書いてみます。しかし、ご両親に助けてもらって下さい。
植物の赤系統の色は一般にアントシアニンという色素による場合が多いです。アントシアニンはポリフェノールと呼ばれるグループの仲間ですが、一種類ではなくたくさんのにた構造をもった多くの化合物があります。しかしカリンジャムの赤い色は多分アントシアニンではないと思います。カリンジャムの色素を調べた研究者の方々が「日本調理科学会」の大会で発表された記録(註)が見つかったのですが、それによるとアントシアニンの仲間の色素は検出(けんしゅつ)できなかったが、ポリフェノールは含まれていた。また、果実量に対して30%の砂糖を加えたときが一番赤色が強かった。ポリフェノールは植物組織ではポリフェノール酸化酵素によって酸化されやすいのですが、酵素がなくても、他の物質が混じって加熱したりすると、赤い色の物質ができるようです。ただし、この物質の正体は明らかにされていません。果実にはいろいろな物質がふくまれていますので、加熱するとそのような反応が起きているのかもしれません。また、マルメロジャムのことについて書いてあったある説明のなかに、赤い色は種子がそれの出来る原因だと書かれていました。理由はあげていませんでした。マルメロやカリンの種子の中にはアミグダリンという物質が含まれており、これが分解するとベンズアルデヒドを生じます。アンズなどの香気のもととなる物質です。ベンズアルデヒドは熱を加えることによって、いろいろな反応生成物ができるようです。その中に赤色を示す物質もあります。
以上のことは何れも推定に基づく説明です。もっと、詳しいことが分かったらお知らせしましょう。

註:「かりんジャムの着色に関する研究」倉林友崇 他 平成26年度日本調理科学会大会研究発表要旨集1E-a5
JSPPサイエンス・アドバイザー
勝見 允行
回答日:2014-12-26
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