質問者:
自営業
ジョージ
登録番号3205
登録日:2014-12-17
北海道でブルーベリーを作っていますが、当地域では冬に-20~25℃まで下がるのと、積雪量が1m弱と少ないために、毎年ブルーベリーの花芽が凍害でやられます。みんなのひろば
ブルーベリーの凍害について
すでに-20℃の日を何回か経験した真冬の2月中旬に、「今年は凍害にあっているかな~?」と、花芽の付いた枝を切って自宅に持ち帰り、水を入れたコップに差して居間の温かい所に置いたところ、ちゃんと花芽が膨らみました。
「よし、今年は凍害の心配はなさそうだ!」と安心し、雪が融けて4月になってみると、最大積雪深の1mより高い部分、つまり雪に埋もれずに外気にさらされていた部分の花芽が凍害でほぼ全滅していました。2月に枝を採取して以降は-20℃になることもなかったのですが、なぜかそれ以降の時期に凍害が発生したようです。
また、最大積雪深より高い部分がきれいに枯れていることから、雪が積もりきった後の、春に向けて温度が上昇していく時期に凍害が起きているのでないか?というのが私の仮説ですが、このあたりのメカニズムはどのようになっているのでしょうか?なんとなく、気温が高くなってきて春に向けて植物体の耐寒性が弱くなっている時期に最低気温が下がると、凍害にあってしまうのではないか?と思っています。
今年は凍害の対策として、ブルーベリーの木をヒモでしばって冬囲いしたのちに、上から米袋・麻袋・布などを試しに巻いて様子を見ています。もし私の仮説が正しいとしたら、木に巻くものは日中温度が上がらず夜に温度が下がりにくい素材がいいのではと考えてます。
また、凍害のメカニズムとして、なんとなく植物体の体内の糖度が上がれば耐凍性が増しそうな気がします。栽培方法の点から、植物体内の糖度を上げる方法などはありますか?
以上2点、凍害のメカニズム、防ぐ方法について、ご教授いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
ジョージ様
ご質問どうも有難うございます。
岩手大学農学部附属寒冷バイオフロンティア研究センターの上村松生先生に御回答頂きました。
松永幸大(JSPP広報委員長)
植物、特に複雑な構造を持つ木本植物の凍害メカニズムは、かなり複雑です。
今回は、ご質問にあるブルーベリー花芽についてお答えします。ブルーベリーの花芽は、気温が氷点下に下がっても、ある程度の温度までは凍結しないで生存することができます(器官外凍結:登録番号1123に対する回答を参照して下さい)。品種によって異なりますが、強いものでは-30℃まで器官外凍結で生存できるものも知られています。たぶん北海道で栽培されている品種も、器官外凍結で-20℃以低までは生存できるではないでしょうか。
以上のこととご質問を読んでみて、ジョージさんがおっしゃるように、雪に埋もれずに外気に曝されていた部分の花芽が春になって死んでいたのは、厳冬期から春にかけて起こる気温の上昇に伴って耐寒性が低下する際に、器官外凍結によって凍結を免れていた花芽が凍ってしまい傷害と受けたものと考えられます。事実、ある研究によると、2月中頃から4月にかけて、ブルーベリー花芽の耐寒性は徐々に低下することが示されています。従って、耐寒性が低下する時期に急激に厳しい寒さに襲われると、花芽が凍害に遭うチャンスは大いにあると考えられます。
凍害を防ぐ方法はなかなか難しいと思います。低温にさらされると植物体の糖濃度が上昇することはよく知られており、その結果、細胞内浸透濃度が上昇することにより凍結しにくくなる、あるいは、蓄積した糖類が細胞内高分子の凍結融解過程における変性を防ぐなどによって、耐寒性が増加すると考えられています。しかし、人工的に植物体の糖濃度を増加させることは簡単ではありません。
一方、ジョージさんが試されている「冬囲いした後に防寒資材で植物体を覆う」のは、凍害を防ぐ一つの方法かもしれません。以前にも、ブルーベリー収量に対する被覆効果が様々な資材を使用して調査されていますが、あまり効果は認められませんでした。しかし、この実験で使用されたものはジョージさんが試されている資材とは異なっていますので、今回の実験で効果のある資材が見つかるかもしれません。楽しみですね。
参考文献:
Rowland et al. (2008) Cold tolerance of blueberry genotypes throughout
the dormant period from acclimation to deacclimation. HortScience 43:
1970-1974.
佐藤幸雄.1990.各種防寒資材の被覆がブルーベリーの寒害発生及び収量に及ぼ
す影響.信州大学農学部農場報告 5: 31-36.
ご質問どうも有難うございます。
岩手大学農学部附属寒冷バイオフロンティア研究センターの上村松生先生に御回答頂きました。
松永幸大(JSPP広報委員長)
植物、特に複雑な構造を持つ木本植物の凍害メカニズムは、かなり複雑です。
今回は、ご質問にあるブルーベリー花芽についてお答えします。ブルーベリーの花芽は、気温が氷点下に下がっても、ある程度の温度までは凍結しないで生存することができます(器官外凍結:登録番号1123に対する回答を参照して下さい)。品種によって異なりますが、強いものでは-30℃まで器官外凍結で生存できるものも知られています。たぶん北海道で栽培されている品種も、器官外凍結で-20℃以低までは生存できるではないでしょうか。
以上のこととご質問を読んでみて、ジョージさんがおっしゃるように、雪に埋もれずに外気に曝されていた部分の花芽が春になって死んでいたのは、厳冬期から春にかけて起こる気温の上昇に伴って耐寒性が低下する際に、器官外凍結によって凍結を免れていた花芽が凍ってしまい傷害と受けたものと考えられます。事実、ある研究によると、2月中頃から4月にかけて、ブルーベリー花芽の耐寒性は徐々に低下することが示されています。従って、耐寒性が低下する時期に急激に厳しい寒さに襲われると、花芽が凍害に遭うチャンスは大いにあると考えられます。
凍害を防ぐ方法はなかなか難しいと思います。低温にさらされると植物体の糖濃度が上昇することはよく知られており、その結果、細胞内浸透濃度が上昇することにより凍結しにくくなる、あるいは、蓄積した糖類が細胞内高分子の凍結融解過程における変性を防ぐなどによって、耐寒性が増加すると考えられています。しかし、人工的に植物体の糖濃度を増加させることは簡単ではありません。
一方、ジョージさんが試されている「冬囲いした後に防寒資材で植物体を覆う」のは、凍害を防ぐ一つの方法かもしれません。以前にも、ブルーベリー収量に対する被覆効果が様々な資材を使用して調査されていますが、あまり効果は認められませんでした。しかし、この実験で使用されたものはジョージさんが試されている資材とは異なっていますので、今回の実験で効果のある資材が見つかるかもしれません。楽しみですね。
参考文献:
Rowland et al. (2008) Cold tolerance of blueberry genotypes throughout
the dormant period from acclimation to deacclimation. HortScience 43:
1970-1974.
佐藤幸雄.1990.各種防寒資材の被覆がブルーベリーの寒害発生及び収量に及ぼ
す影響.信州大学農学部農場報告 5: 31-36.
岩手大学農学部附属寒冷バイオフロンティア研究センター
上村 松生
回答日:2014-12-26
上村 松生
回答日:2014-12-26