一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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カブの地上部分はなぜ白いままのか

質問者:   自営業   くまのみ
登録番号3211   登録日:2015-01-10
農業をしているのものです。

先日うちの農園スタッフの子から、
カブの膨らんでいるところ(「胚軸」でしたっけ?)はなぜ白いままなのか?ということを聞かれました。

その子いわく、長ねぎや大根、にんじんは土からの下のところは白色やオレンジ色になり、土から出ているところは緑色になる。じゃがいもやさといもも日に当てると緑色になる。
でもカブは地上部分がずっと白いままで収穫できるのはなぜなのか?ということでした。

確かにそうだな、と思いました。ぜひ教えてください。よろしくお願いします。
くまのみ 様

ご質問をありがとうございます。
カブにはアントシアニンなどの色素を蓄積する色彩の多彩な品種が知られています
ね。ここではクロロフィルの蓄積による緑色化の場合に限って回答させていただきま
す。なお、回答文は斑入りのメカニズムなどについてお詳しい岡山大学の坂本亘先生
が作成して下さいました。

佐藤公行(JSPPサイエンスアドバイザー)

カブとダイコンの話は、以前にもこの質問コーナーで取り上げられていて、例えば、
1231「ダイコンに光を当てたら葉緑体ができますか?」が参考になると思いますので
見てください。くまのみさんは、胚軸のことはわかっているようなので説明は不要か
と思いますが、胚軸についても以前の登録番号0734「植物のからだについて。」や
登録番号3209「植物の子葉」に書かれていますので参考にしてください。

植物の細胞にはプラスチドと呼ばれる細胞内小器官があり、茎や根など、光があたる
組織ではこれが葉緑体になります。ダイコンなどの土から出ている部分が緑色になる
のは、光が当たって胚軸のプラスチドが葉緑体に変換したと考えられます。緑に見え
ているのは葉緑体にあるクロロフィルという光を吸収する色素です。この色素は、目
に見える光のうち、青色と赤色を好んで吸収するので、吸収されない緑色が反射さ
れるので、私たちには緑に見えています。

さて、カブについて少し調べてみると、胚軸部分が必ずしも白いままではないよう
で、青首大根のように地上部が緑になる青首カブもあるようですね。品種によって白
いままであったり、緑になる違いを考えますと、葉緑体への変換がはじまる遺伝子の
スイッチのオンとオフに違いがあるのでしょう。カブや大根の胚軸部分では、プラス
チドは一旦、白色体(ロイコプラスト)と呼ばれるものに変化したあと、光により葉緑
体への変換スイッチがオンになり、葉緑体に形態が変化します。しかし、分化したプ
ラスチドが再度、葉緑体に変換するスイッチがオフのままだと、緑色になりません。
白いままのカブでは葉緑体への再変換スイッチが壊れているのでしょう。白米など、
日本人は白い食材にこだわることも多く、育種と品種改良のために白くて柔らかくて
均一なカブが好まれて普及しているようです。
岡山大学資源植物科学研究所
坂本亘
回答日:2015-01-19
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