一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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光発芽種子と暗発芽種子の調査をした研究者と発表書名について

質問者:   教員   スーさん
登録番号3214   登録日:2015-01-26
 20世紀初頭,ドイツのキンツェルが,ドイツに自生する965種類の植物のタネの発芽に,光が必要かどうかを調べました。「その中の70%が光発芽種子,27%が暗発芽種子,3%が光に影響しない種子」という調査結果を発表したと,いろいろな植物の本に書かれています。でも,私の読んだ本には,それ以上のことは書かれていませんでした。そこで,もう少し,詳しく知りたいと思いました。
 キンツェルがこのことを発表した本は何という書名で,何年に出版されたのでしょうか。また,その日本語翻訳本があるでしょうか。その965種類の植物名は分かりますか。
 それから,キンツェル以外の世界の植物学研究者で,同じような調査をした人はいるでしょうか。日本ではどうでしょうか。もしいるとしたら,国名,氏名,発表年,発表書名(翻訳本があるかどうかも),内容などについて教えて下さい。
 よろしくお願いします。
スーさん 様

ご質問をありがとうございます。

キンツェル(Wilhelm Kinzel)の調査結果は「Neue Tabellen zu Frost und Licht als beeinflussende Krӓfte bei der Samenkeimung(Eugene Ulmer Verlag, Stuttgart)1926」と題する本で発表されています。この本は、私が調べた限りでは、京都大学農学部と北海道大学農学研究科の図書館にあります。日本語訳はないと思います。上の本の前の版「Frost und Licht als beeinflussende Krӓfte bei der Samenkeimung(Eugene Ulmer Verlag, Stuttgart)1913」にも19ページに及ぶ表が付されており、ここに数百種類の植物名が挙がっております。この版の本は国内の多くの大学などの図書館に所蔵されています。キンツェル以外の世界(日本を含めて)の植物学研究者で同じような調査をした人がいるかどうかは分かりません。“Light control of Seed Germination”、“Light and Seed Dormancy”などの類の表題の著書や総説は多いようですが、キンツェルが何時までも引用されるところから考えると、特定の植物(作物)グループについては別にして、こんな規模での調査はないのではないかとかと思われます。なお、中村包先生の「発芽生理学(Physiology of Seed Germination, 内田老鶴圃新社,1969)」の26-65ページには、発芽に及ぼす光の影響についての初期の研究が詳しく紹介されております。

本コーナーのQ/A(登録番号0847)もご参考になさって下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2015-01-27
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