植物Q&A

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タラヨウの酸化反応について

質問者:   教員   リーダー
登録番号3215   登録日:2015-01-27
タラヨウのタンニンについて(質問番号3207)お答えをいただき、益々タラヨウに興味を持ちました。自分なりに観察を行っています。今回新たな疑問がわき、質問させていただきます。よろしくお願いします。
・タラヨウが、酸化反応でほかの植物よりも顕著に褐色化するのはタンニンの量が多いからなのでしょうか。逆にタンニンの無い・少ない植物はあるのでしょうか。
・液胞の中にあるタンニン(ポリフェノール)が、液胞の外にあるフェノールオキシダーゼという酵素によって触媒され接触し酸化反応を起こすようですが、この酵素は細胞質基質に存在するのでしょうか、それとも細胞膜にあるのでしょうか。またその反応を顕微鏡等で見てみたいのですが、可能な実験方法はありますでしょうか。
・質問番号0864のように、液胞を染色したいのですが、タラヨウでも染色は可能でしょうか。
・タラヨウの葉を火で温めると、火を近づけたところから放射状に葉の色が元々の緑色から鮮やかな黄緑色になる変化が見られました。これはどのような色素が壊れたからなのでしょうか。
以上、お答えいただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
リーダー さん:

タラヨウの葉の褐変現象に関した続いたご質問です。

●一義的にはタラヨウの葉のタンニン類が多いこと、ポリフェノール酸化酵素活性が強いことが原因と考えてよいかと思います。昔、どのくらいの植物が褐変するかどうか(当時はたばこの火を押し付けていわゆる死環(ドイツ語でTodesring、英語では直訳のDeath ringができるかどうか)を調べたことがあります。食用にする葉菜類はほとんど死環ができません。これは当然で、タンニン、ポリフェノールが多い作物は渋み、苦みが強いのでそうでない作物が選別されてきたからです。樹木ではマサキが褐変しなかったことを覚えています。
●ポリフェノール酸化酵素は細胞質の可溶性分画にあります。
「反応を顕微鏡で観察する」の意味が分かりかねますが、葉肉細胞が見えること、傷をつけたとき細胞液と細胞質の混合状態が見えることが前提になります。タラヨウのように厚く、革質の葉では、そのままで生きた葉肉細胞を透過型顕微鏡で観察することはかなり困難です。さらに、細胞レベルの少量の溶液の色変化を目で捉えるのは至難でしょう。実体顕微鏡で観察できる程度であれば工夫をすれば何とかなりそうに思えます。タラヨウの葉を実体顕微鏡の下で見ながら、楊枝や熱した針などでつついたらどんな風になるでしょうか。いろいろ試してみてください。
●液胞の染色も上記のような理由でまず観察不可能でしょう。オオムギの幼葉鞘とタラヨウ緑葉とでは物理的構造があまりにも違いすぎます。
●緑葉を徐々に熱するとクロロフィルのフィトールが切り取られクロロフィリドとなったり、マグネシウムが外れてフェオフィチンが生成されたりします。クロロフィリドもフェオフィチンも基本的には緑色ですが黄緑色的
で色調はクロロフィルとは異なります。さらに高温になると細胞自体が死滅し酵素類が働かなくなるため黄緑色が残ります。上記の死環は高温の熱源を一瞬押し付けると、高温の熱源を中心として温度低下が円状(環状)に広がり、中心付近は高温で細胞が死に酵素も失活し緑色が円状に残りますが、その外側のある範囲は細胞の恒常性は破壊されるが酸化酵素は失活しないので環状に褐変が起きるために出来ます。さらに外側では温度は細胞を殺すほど高くなくなりますから変化が起きません。中高温においたり、傷をつけたりするということは、細胞の構造を破壊するが、含まれる成分や酵素類は活性が残っている状態(いわば半殺し)の状態であるわけです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2015-01-30