一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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紅葉前のアントシアニンの状態について

質問者:   大学院生   Mina
登録番号3225   登録日:2015-02-19
紅葉について調べていたとき、秋になって温度が低下すると葉と枝の間に離層が形成され、光合成で葉の中に作られていた糖分が葉中に滞留し、葉中の糖濃度が上昇、その糖を用いてアントシアニンがつくられ葉が赤色に変化するということが書かれていました

この反応は、アントシアニンのアグリコンが配糖化されてアントシアニンとなる反応のことで間違いないのでしようか?
その場合、シアニジンといったアントシアニンのアグリコンも赤色を示すと思われるのですが、紅葉とはフラボノイド生合成経路のうち、どこからどこまでを指す言葉なのでしょうか?
また、紅葉が見られる前の時期においては、将来アントシアニンとなる物質は葉中でどのような状態で存在しているのでしょうか
Mina さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
植物生理学を専攻されている大学院学生とのことですのでアントシアニンの合成経路や関与する酵素類についてはご自分でお調べになってください。たいていの植物生理学の参考書には記載されています。
まず、着色はアグリコンであるアントシアニジンによるものでその配糖体化によるものではありません。アントシアニジンは水に難溶性ですので細胞内に多量に蓄積することができません。配糖体化は水溶性にして液胞内に蓄積する役割を果たしています。
アントシアニン合成が起きて細胞が着色する場合には、アントシアニジン(フラボノイド)の新たな合成によることが多くの植物組織で証明されています。緑葉ではきわめて少量ですが、光学的に測定した研究結果によればノルウェイカエデの場合緑葉が紅葉するとアントシアニン含量はおよそ200倍に増加しています。多くの場合、アントシアニジンの増加はフラボノイド生合成の初期段階にある酵素活性の上昇によるとされています。フェニルアラニンを桂皮酸に変換するフェニルアラニン・アンモニアリアーゼ(PAL)、続くカルコン合成酵素、カルコンイソメラーセ、フラバノン合成酵素などの遺伝子の発現が顕著に起こり、それぞれの酵素活性が上昇することが示されています。多くの場合にはPALが生合成の律速酵素となっているようです。しかし、以後、アントシアニンに達するまでにはたくさんの酵素が関与していますが、それらの遺伝子発現も変動していることは十分に推測されます。「将来アントシアニンとなる物質」はフェニルアラニンと酢酸(アセチルCoA)ということができます。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2015-02-23
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