質問者:
大学院生
ねね
登録番号3226
登録日:2015-02-23
カキ(柿)の組織培養をしています。腋芽の赤褐色化
通常MS培地で培養すると植物体は緑色です。
しかし、MS(1/2N)培地(窒素含有量を半分にした培地)で培養すると、腋芽のみが赤褐色になりました。
窒素欠乏が腋芽のみに表れ、色の変化をもたらしたのでしょうか。
それとも、アントシアニンなどの植物色素でしょうか。
教えていただけると幸いです。
また、自分でも読んでみたいので、文献などありましたら教えてください。
ねね様
質問コーナーへようこそ。歓迎致します。お願いしました培養方法など追加説明と培養植物の写真をありがとうございました。
さて、この現象がカキだけに特徴的なものなのかどうかは分かりませんが、窒素量を1/2にすると腋芽が赤くなるということは確かなようですので、赤色化と培地の窒素量との間には何らかの関係はありそうです。まず、この赤色の色素はおそらくアントシアニンであろうと推定されますが、実際に抽出して確認してみて下さい。カキの葉は「柿紅葉」という言葉があるくらい、秋になると美しく紅葉します。これはアントシアニンの合成によるものです。ということは、カキはアントシアニンの合成に関係する遺伝子を持っていることになります。つまり、落葉の時期になると、他の同様の樹木(モミジなど)のように葉緑素の消失とともに、アントシアニンの合成が活性化されます。このことについては質問コーナーで「アントシアニン」「紅葉」などの語彙で検索して関連質問の回答を読んで下さい。
そうすると、腋芽の赤色化(アントシアニンだとみなして)は何らかの原因で、局所的に(腋芽)にアントシアニンの合成が誘導されたことになります。アントシアニンの合成はさまざまな要因で影響を受けますが、その一つに窒素量があります。色々な実験で窒素量を少なくすると、アントシアニンの合成が増加すると報告されています。培地から吸収される窒素栄養は主として成長している組織器官へ輸送されますので、窒素量が半分でも腋芽以外の組織には十分なのかもしれません。しかし、腋芽への窒素栄養の配分は少ないため、そのような現象が起きるのかもしれません。写真によると培養植物体の基部の腋芽は緑の様に見受けられます。つまり、培地から近い所では上部の腋芽よりも多い窒素栄養が供給されていてもおかしくはありません。
こちらからの質問で窒素量を変化させた実験はあるかを聞いたのは、腋芽の赤色化の程度と窒素量の間に定量的関連が見られるかどうかということと、窒素量を更に少なくしたら、腋芽だけでなく葉にも赤色化が見られるのではないかと思ったからです。
また、赤色化した腋芽を取り出して正常培地で培養すると、どうなるでしょうか。それから成長する植物体も赤色化は継続しているということであれば、前の培養でアントシアニン合成のスイッチが入ったままになってしまったことになります。赤色化が見られなくなれば、やはり、窒素量が問題となりますね。
もう一つ、植物体でみられる赤い腋芽は冬眠芽と同じ形態なのでしょうか。そうだとすると冬眠芽は蓋葉(subtending leaf)で包まれています。赤色の部分はこの蓋葉だけでしょうか。また内部の組織もやはり赤いのでしょうか。
いずれにしろ現段階ではすべて推察の域をでないようです。
適切な文献はありませんが、アントシアニンと窒素量に関しては、関連の項目でwebを検索して頂ければ幾つか参考になる文献があります。
質問コーナーへようこそ。歓迎致します。お願いしました培養方法など追加説明と培養植物の写真をありがとうございました。
さて、この現象がカキだけに特徴的なものなのかどうかは分かりませんが、窒素量を1/2にすると腋芽が赤くなるということは確かなようですので、赤色化と培地の窒素量との間には何らかの関係はありそうです。まず、この赤色の色素はおそらくアントシアニンであろうと推定されますが、実際に抽出して確認してみて下さい。カキの葉は「柿紅葉」という言葉があるくらい、秋になると美しく紅葉します。これはアントシアニンの合成によるものです。ということは、カキはアントシアニンの合成に関係する遺伝子を持っていることになります。つまり、落葉の時期になると、他の同様の樹木(モミジなど)のように葉緑素の消失とともに、アントシアニンの合成が活性化されます。このことについては質問コーナーで「アントシアニン」「紅葉」などの語彙で検索して関連質問の回答を読んで下さい。
そうすると、腋芽の赤色化(アントシアニンだとみなして)は何らかの原因で、局所的に(腋芽)にアントシアニンの合成が誘導されたことになります。アントシアニンの合成はさまざまな要因で影響を受けますが、その一つに窒素量があります。色々な実験で窒素量を少なくすると、アントシアニンの合成が増加すると報告されています。培地から吸収される窒素栄養は主として成長している組織器官へ輸送されますので、窒素量が半分でも腋芽以外の組織には十分なのかもしれません。しかし、腋芽への窒素栄養の配分は少ないため、そのような現象が起きるのかもしれません。写真によると培養植物体の基部の腋芽は緑の様に見受けられます。つまり、培地から近い所では上部の腋芽よりも多い窒素栄養が供給されていてもおかしくはありません。
こちらからの質問で窒素量を変化させた実験はあるかを聞いたのは、腋芽の赤色化の程度と窒素量の間に定量的関連が見られるかどうかということと、窒素量を更に少なくしたら、腋芽だけでなく葉にも赤色化が見られるのではないかと思ったからです。
また、赤色化した腋芽を取り出して正常培地で培養すると、どうなるでしょうか。それから成長する植物体も赤色化は継続しているということであれば、前の培養でアントシアニン合成のスイッチが入ったままになってしまったことになります。赤色化が見られなくなれば、やはり、窒素量が問題となりますね。
もう一つ、植物体でみられる赤い腋芽は冬眠芽と同じ形態なのでしょうか。そうだとすると冬眠芽は蓋葉(subtending leaf)で包まれています。赤色の部分はこの蓋葉だけでしょうか。また内部の組織もやはり赤いのでしょうか。
いずれにしろ現段階ではすべて推察の域をでないようです。
適切な文献はありませんが、アントシアニンと窒素量に関しては、関連の項目でwebを検索して頂ければ幾つか参考になる文献があります。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-02-27
勝見 允行
回答日:2015-02-27