質問者:
会社員
リリス
登録番号3230
登録日:2015-03-08
京大の十河暁子さんの『雄も強い雌が好き』という文章を読んでいて非常に不思議に思ったことがあるので、ここで質問させていただきたく思います。合点受精について
ブナ目の植物では花粉管が珠孔ではなく合点から胚嚢に入っていく『合点受精』が起きると記載されておりました。『合点受精』を起こす植物が存在することは承知していましたが、『花粉管の伸長方向の誘導はLUREタンパク質が助細胞から分泌されることで引き起こされる』という名大の東山教授による大発見を考え合わせると、以下の疑問が湧いてきました。
疑問:ブナ目の胚珠ではなぜ合点へと伸長が誘導されるのか?
自分がない頭を振り絞って考えると、次の仮説が浮かびます(以下ブナでもLUREと呼ぶのかわからないため誘導物質を”LURE様物質”と呼称します)。
A:合点側に卵細胞と助細胞がある。
B:反足細胞からLURE様物質が分泌される。
C:オーキシンの極性移動のように、助細胞からLURE様物質が分泌されるが、合点側に輸送される。
D:ブナの花粉管はLURE様物質に対して負の化学屈性を持つためにLURE様物質の薄い合点側へと行こうとする。
このくらいです。
以上について、『合点受精』と『LURE』を組み合わせた研究や知見はあるのでしょうか?あるとすればA~Dあるいはそれ以外のどのような『花粉管が合点へと導かれる理由』の仮説があるのでしょうか?ご教授お願い致します。
リリス様
ご質問どうも有り難うございました。
十河さん達のブナ目における花粉管誘導の研究は、とてもユニークで、様々な示唆を与えてくれます。ブナ目で見られた合点受精についてですが、そもそも合点受精とは、花粉管が胚珠の珠孔ではなく合点を経由して誘導される場合のことを指します。しかし合点受精であれ、一般的に見られる珠孔受精であれ、最終的に花粉管は胚嚢の珠孔側、つまり助細胞と卵細胞のある側から胚嚢に進入します。十河さん達の「雄も強い雌が好き」の図を注意深く見て頂きますと、花粉管はそのように胚珠の合点を経由したのちに、胚嚢の珠孔側から進入する様子が描かれています。従いまして、おそらくブナ目でも、最終的な誘導は助細胞から分泌されるLUREのような誘引ペプチドによると想像できます。また、ブナ目でのその誘引物質の有効範囲は、十河さん達の研究と合わせて考えますと、長くても助細胞から合点付近までと予想できます。
何が花粉管を合点まで誘導しているかにつきましては、まだわかりません。ただ、胚珠に由来する花粉管誘引物質には、LUREのように短距離でとても正確に働く分子だけではなく、長距離で大まかに方向性を決めるような分子もあるのではないかと長年予想されています。詳しくは書けませんが、最先端の研究分野では、そのような胚珠由来の新しい誘引物質の候補についても研究が進んでいて、注目を浴びています。ブナのような合点受精をする植物では、LUREやLUREとは異なるタイプの誘引物質の分布が、珠孔受精をする植物とは違っているのかも知れませんね。
ご質問どうも有り難うございました。
十河さん達のブナ目における花粉管誘導の研究は、とてもユニークで、様々な示唆を与えてくれます。ブナ目で見られた合点受精についてですが、そもそも合点受精とは、花粉管が胚珠の珠孔ではなく合点を経由して誘導される場合のことを指します。しかし合点受精であれ、一般的に見られる珠孔受精であれ、最終的に花粉管は胚嚢の珠孔側、つまり助細胞と卵細胞のある側から胚嚢に進入します。十河さん達の「雄も強い雌が好き」の図を注意深く見て頂きますと、花粉管はそのように胚珠の合点を経由したのちに、胚嚢の珠孔側から進入する様子が描かれています。従いまして、おそらくブナ目でも、最終的な誘導は助細胞から分泌されるLUREのような誘引ペプチドによると想像できます。また、ブナ目でのその誘引物質の有効範囲は、十河さん達の研究と合わせて考えますと、長くても助細胞から合点付近までと予想できます。
何が花粉管を合点まで誘導しているかにつきましては、まだわかりません。ただ、胚珠に由来する花粉管誘引物質には、LUREのように短距離でとても正確に働く分子だけではなく、長距離で大まかに方向性を決めるような分子もあるのではないかと長年予想されています。詳しくは書けませんが、最先端の研究分野では、そのような胚珠由来の新しい誘引物質の候補についても研究が進んでいて、注目を浴びています。ブナのような合点受精をする植物では、LUREやLUREとは異なるタイプの誘引物質の分布が、珠孔受精をする植物とは違っているのかも知れませんね。
JSPP広報委員・名古屋大学・ITbM
東山 哲也
回答日:2015-03-10
東山 哲也
回答日:2015-03-10