一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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枝の異常分岐

質問者:   公務員   星の王子
登録番号3250   登録日:2015-04-06
群馬県北部の山地で、落葉樹(シナノキ)の枝が細かに異常分岐しているのを見ました。サクラのテング巣病、あるいは、細かな枝のヤドリギみたいな感じでした。そうなる原因として考えられることをおしえて下さい。
星の王子さま

お待たせいたしました。頂いたご質問の回答を植物と微生物の相互作用についてのご研究をなさっておられる岡山県農林水産業研究センターの白石友紀先生にお願いいたしておりましたところ、以下の様な回答をお寄せ下さいました。新発見かもしれないと云うお話でした。

【白石先生からのご回答】
実物を拝見しておりませんが、
①ヤドリギではないと思われます。理由:ヤドリギは、冬場でも葉が残りますので、比較的鬱蒼としています。また、着生する場所は、トリが止まりやすい枝(比較的水平な枝)に発生しやすいです。

②そうすると、これは何らかの病原体あるいは原因による発症(発病)の可能性が高いと考えられます。
天狗巣症状は、ご記載のように、有名なものでは、バラ科のサクラに、糸状菌(カビ)Taphrina wiesneri(子嚢菌のサクラ天狗巣病菌)が感染して起こります。また、カバノキ(バラ類に属す)にはTaphrina betulinaが天狗巣症状を起こします。シナノキもバラ類であるため、Taphrina菌によって、この症状が現れる可能性はありますが、本邦では、シナノキに感染するTaphrina菌は未記載です。新発見かもわかりません。

タケ類に発生する天狗巣病は、上記とは異なる糸状菌です。

他に、天狗巣症状が現れる有名な病原体では、キリやクワに感染するPhytoplasma(ファイトプラズマ)があります。しかし、シナノキでは本邦では未記載でした。

また、昆虫類や線虫が原因でも発症するようです(私は見たことがありません)。

③このように、シナノキに天狗巣症状を引き起こした病原体あるいは原因は何かと云うことですが、これは、実物がないとはっきりとしたことは云えません。Taphrinaであれば、一般に、観察、分離、培養、接種によって確かめますが、遺伝子診断も可能です。ファイトプラズマの場合は、遺伝子診断が可能です。

 白石友紀(岡山県農林水産業研究センター)

JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2015-04-15
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