質問者:
会社員
きっしー
登録番号3258
登録日:2015-04-21
こんにちは。いつも拝見させて頂いております。葉の役割
私は現在、ミニトマトの生産に携わっているのですが、摘葉作業中に疑問が浮かびましたので質問させて頂きます。
トマトの手入れで、不要になった葉(下葉)を取り除くという行程があるのですが、あまり取り過ぎると、トマトの味(主に糖度)に悪影響なのではないかと感じています。現在、1つの花房全体の6割程が色付いた時点で、その周りの葉を取り除いているのですが、糖度を最大限に上げたいのであれば、やはりその花房全てを収穫し終えるまでは、周りの葉は取り除かないのがベストなのでしょうか。
また、葉を残し過ぎると、生長点の生育にも良くない(根からの養分が、葉にばかり行ってしまうため)との意見も聞きます。もしそうであるならば、仮に、1本の木の全ての葉を取り除くと、生長点はスクスク伸びて行くのでしょうか。頂芽の生長にはオーキシンが影響しているというのはこちらの質問コーナーで学びました。葉を全部取り除き、葉での光合成が全く行われなくなった時、オーキシンは合成されるのでしょうか。また、頂芽は生長するのでしょうか。
ご回答よろしくお願いします。
きっしー様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。トマトの生産における摘葉の処理は栽培技術上の問題ですので専門的な立場からお答する事はできません。ただ,質問タイトルの「葉の役割」という植物の成長の一般論としての回答といたします。
葉という器官は植物にとって生命維持のもっとも基本的器官の一つであるといえましょう。二つ主要な役割があります、まず、葉が行う光合成です。植物は動物と異なって、成長や生命活動維持に必要な有機栄養分(炭水化物、脂肪、タンパク質やその他の有機化合物)を自分で合成します。根から吸い上げた水(H2O)と葉の気孔から取り入れた空気中の二酸化炭素(CO2)を材料に、デンプン・糖(C,O,Hからできている)を合成します。この時合成のエネルギーとして光(太陽光)を使います。他方、根からは水と一緒に各種のミネラル(N,K, Mg, Mn, P,Ca,Fe,S などいわゆる肥料)が取り込まれます。光合成産物から由来するC,H,Oからだけで作られている各種の有機化合物にN, Sが加わってアミノ酸→タンパク質が合成されます。NとPは遺伝物質(DNA, RNA)の構成元素ですし、Pは細胞膜の主要構成要素であるリン脂質の合成にも必要です。Mgはクロロフィルにも必要ですね。その他の微量な元素は細胞機能の調節作用や、各種の生化学反応を触媒する酵素の働きを助けます。もう一つの役割は水分の吸収です。水は根から吸収され、道管を通して植物の隅々まで輸送されます。その原動力に葉が必要なのです。葉にある気孔は光合成に必要な二酸化炭素と取り込むだけでなく、光合成の産物である酸素を空気中へ放出する出口でもありますが、植物体からの水の排出(蒸散といいます)の場所でもあります。根から吸収される水分は植物体中にとどまって細胞の膨圧を維持したり,生化学反応などの材料として(光合成のように)使われますが、大部分は蒸散で空気中へ排出されます。水に含まれている物質(ミナラルなど)が体中に残されます。言ってみれば植物体は大きな篩のようなものです。ところで、この根からの吸水の原動力となっているのが蒸散なのです。道管は水で満たされた一種の毛細管で、根から葉の先までつながっています。葉から蒸散が起きて水分が失われると、道管の末端で陰圧が生じ、これが道管中の水柱を引き上げるのです。100mを越すアメリカのセコイアスギが樹の先端まで水を吸い上げることができるほどの力を生じるのです(登録番号1241参照)。だから葉がないと植物はふつうには生きていけません。勿論新しい葉た茎や根を作ったり、花を咲かせたり、果実を実らせたりも出来ません。葉は幹や枝の茎頂(いわゆる成長点)の分裂組織から分化して作られます。慶長が伸びるに従って葉は下方へ押しやられ同時に面積がふえて大きく成長しますが、一定の大きさまで成長すると(大きくなると)、そこで成長はとまります。つまり葉自身の成長のための栄養分の供給は必要なくなります。専ら光合成を行って産物を他の必要な場所(新しく成長が続いている所)へ供給することになります。
さて、質問中では果実の周りの葉を取り除くとありますが、これはおおきくなって盛んに光合成をしている葉でしょうか。それとも、新葉でまだ成長中のものでしょうか。もし後者だとすると、運ばれてくる栄養分は果実と葉とで取り合いになるということがあるのかもしれません。
トマトの糖度は果実の水分に比して糖の含量が多い状態に高くなります。したがって、あまり水分が取り込まれない方がよいですから、その観点からは蒸散の盛んな葉が近くにあってどんどん水が果実に供給されると甘味が落ちる(サイズは大きくるでしょうが)
のかもしれません。いずれも想像ですが。トマトの糖度については登録番号1232, 3621を読んで下さい。
なお、葉を全部取り除いてしまうと、場合によっては茎や根などに貯蔵されている栄養分が稼働されて、すこしでも新しい葉が形成され、成功すれば徐々に全体の成長力を回復して行く場合も在ります。オーキシンは茎頂で合成されますので、茎頂が活発であれば合成は続くでしょう。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。トマトの生産における摘葉の処理は栽培技術上の問題ですので専門的な立場からお答する事はできません。ただ,質問タイトルの「葉の役割」という植物の成長の一般論としての回答といたします。
葉という器官は植物にとって生命維持のもっとも基本的器官の一つであるといえましょう。二つ主要な役割があります、まず、葉が行う光合成です。植物は動物と異なって、成長や生命活動維持に必要な有機栄養分(炭水化物、脂肪、タンパク質やその他の有機化合物)を自分で合成します。根から吸い上げた水(H2O)と葉の気孔から取り入れた空気中の二酸化炭素(CO2)を材料に、デンプン・糖(C,O,Hからできている)を合成します。この時合成のエネルギーとして光(太陽光)を使います。他方、根からは水と一緒に各種のミネラル(N,K, Mg, Mn, P,Ca,Fe,S などいわゆる肥料)が取り込まれます。光合成産物から由来するC,H,Oからだけで作られている各種の有機化合物にN, Sが加わってアミノ酸→タンパク質が合成されます。NとPは遺伝物質(DNA, RNA)の構成元素ですし、Pは細胞膜の主要構成要素であるリン脂質の合成にも必要です。Mgはクロロフィルにも必要ですね。その他の微量な元素は細胞機能の調節作用や、各種の生化学反応を触媒する酵素の働きを助けます。もう一つの役割は水分の吸収です。水は根から吸収され、道管を通して植物の隅々まで輸送されます。その原動力に葉が必要なのです。葉にある気孔は光合成に必要な二酸化炭素と取り込むだけでなく、光合成の産物である酸素を空気中へ放出する出口でもありますが、植物体からの水の排出(蒸散といいます)の場所でもあります。根から吸収される水分は植物体中にとどまって細胞の膨圧を維持したり,生化学反応などの材料として(光合成のように)使われますが、大部分は蒸散で空気中へ排出されます。水に含まれている物質(ミナラルなど)が体中に残されます。言ってみれば植物体は大きな篩のようなものです。ところで、この根からの吸水の原動力となっているのが蒸散なのです。道管は水で満たされた一種の毛細管で、根から葉の先までつながっています。葉から蒸散が起きて水分が失われると、道管の末端で陰圧が生じ、これが道管中の水柱を引き上げるのです。100mを越すアメリカのセコイアスギが樹の先端まで水を吸い上げることができるほどの力を生じるのです(登録番号1241参照)。だから葉がないと植物はふつうには生きていけません。勿論新しい葉た茎や根を作ったり、花を咲かせたり、果実を実らせたりも出来ません。葉は幹や枝の茎頂(いわゆる成長点)の分裂組織から分化して作られます。慶長が伸びるに従って葉は下方へ押しやられ同時に面積がふえて大きく成長しますが、一定の大きさまで成長すると(大きくなると)、そこで成長はとまります。つまり葉自身の成長のための栄養分の供給は必要なくなります。専ら光合成を行って産物を他の必要な場所(新しく成長が続いている所)へ供給することになります。
さて、質問中では果実の周りの葉を取り除くとありますが、これはおおきくなって盛んに光合成をしている葉でしょうか。それとも、新葉でまだ成長中のものでしょうか。もし後者だとすると、運ばれてくる栄養分は果実と葉とで取り合いになるということがあるのかもしれません。
トマトの糖度は果実の水分に比して糖の含量が多い状態に高くなります。したがって、あまり水分が取り込まれない方がよいですから、その観点からは蒸散の盛んな葉が近くにあってどんどん水が果実に供給されると甘味が落ちる(サイズは大きくるでしょうが)
のかもしれません。いずれも想像ですが。トマトの糖度については登録番号1232, 3621を読んで下さい。
なお、葉を全部取り除いてしまうと、場合によっては茎や根などに貯蔵されている栄養分が稼働されて、すこしでも新しい葉が形成され、成功すれば徐々に全体の成長力を回復して行く場合も在ります。オーキシンは茎頂で合成されますので、茎頂が活発であれば合成は続くでしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-04-24
勝見 允行
回答日:2015-04-24