一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ナガイモってなぜ、長い?

質問者:   大学生   まや
登録番号3262   登録日:2015-04-28
私の地元は十勝です。ふと、自分が教師になると考えたときに自分の地元のことを何も知らないと感じました。そもそも十勝では農業が有名なのに、農業はすごいというだけで何がすごいかなど知りません。
そこで、農業でも植物の特性を生かした農業という面から農業を見たいと思いました。そこで、ナガイモに注目したときに、なぜ、ナガイモは長いのだろう?長く生きなければいけない理由はなんだろうと考えました。
ぜひ、ナガイモの長い理由を教えてください。
まや様

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。質問を読ませて頂きながら遠い中学生の頃のことを思い出しました。ちょっと変わった生物の先生がおられて、試験に「アカマツは何故赤い?クロマツは何故黒い?」と言う質問を出されました。生徒は生育地の環境を考えながら答案をこしらえましたが、いずれも「バツ」で、正解は「アカマツは赤いからアカマツ。クロマツは黒いからクロマツ。理由は分からない」でした。その先生によれば正解は「ナガイモは長いからナガイモ。理由は分からない」だと思うのですが、それではお役目が果たせないので、ちょっと勉強しました。熊沢正夫先生の「植物器官学(裳華房)」によれば、「種子から発芽したナガイモの最初の芋は、胚軸の肥大からはじまる。」と言うことですので、ナガイモの芋の形は胚軸(芽生えの茎の子葉より下の部分)の形と関係があるらしいです。そうだとすると、ナガイモは何故長いのかと言う質問は、茎は何故長いのかと言う問題に置き換えることが出来そうです。ナガイモの芋が長い理由についての研究は見当たりませんでしたが、茎が細くて長い理由についての研究はあります。ご存知と思いますが、植物の茎は細胞で出来ています。茎が細くて長いのは茎の細胞が細くて長いからです。茎の細胞は細くて長いのですが、その細胞が生まれたばかりの時は細長くありません。縦方向の長さより横方向の長さの方が長いくらいです。ところがこの細胞が体積を増やす時、細胞は横方向には伸びず、縦方向にばかり伸びるので細長くなるのです。そこで何故横方向に伸びないかと言うことになりますが、これもご存知と思いますが植物の細胞は丈夫な細胞壁に取り囲まれています。その細胞壁の成分でもっとも丈夫なのがセルロースですが、茎の細胞の細胞壁ではセルロースは細胞の長軸(縦方向)と直角方向に並んでいます。茎の細胞はセルロース製の肥満防止用腹巻きをしていると考えて良いでしょう。この腹巻きの働きで長軸方向に偏った伸長をするのです。芋が出来る時には横方向にも大きくなりますが、茎の細長い形を基本としているので長い形になるのだと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2015-05-10
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