一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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インビトロプランツの水浸状化はなぜ?

質問者:   高校生   バイオ部長
登録番号3265   登録日:2015-05-01
高校の部活でエキザカムなどの植物を、ガラス容器で無菌培養しています。そのなかで、最近、茎や葉がヒョロヒョロとして、白っぽくなってしまっているものを多く見るようになりました。水浸状化、というものではないかと思っているのですが、原因と解決策があれば教えて下さい。
バイオ部長殿

質問コーナーヘようこそ。歓迎致します。ご質問で表現されている「茎や葉がヒョロヒョロとして、白っぽくなってしまっている」という記述だけでは水浸状化かどうかはっきりと判断することは出来ません。単に光量不足などのよる黄化現象の現れかもしれません。植物の組織培養では多分1970年代頃から「水浸状化(vitrification)」が問題となっており、論文も沢山出ています。水浸状化した培養植物体では水ぶくれや器官肥大、クロロフィルa,bの欠乏、細胞壁のリグニン化の低下、葉肉(海綿状・柵状組織)細胞間隙の拡大などの現象が見られ、植物の種類を通してほぼ共通の現象です。大まかに言って、水浸状化した培養植物体は外見上、肥大、湾曲、脆い、半透明などの症状を示します。水浸状化対策としては特にこれだという方法はありません。個々のケースについていろいろな方策が試みられている様です。上記症状を引き起こす原因としては、培養条件のすべての面に関わります。すなわち、有機、無機の培地組成(種類と濃度)、固形化材(寒天、ガランガムなど)、植物ホルモン、水分量(水ポテンシャル)、温度、光量などです。ある研究では根圏細菌の添加が水浸状化回避に有効だったという報告もあります。エキザカムの場合は全く分かりませんので,いろいろ試してみるより他はないでしょうね。WEBで調べたら『カーネーションの茎頂培養における水浸状個体の発生防止』という報告がありました。参考になるかもしれません。なお、もっと専門的に調べてみたいという場合には英語の文献ですが次の本があります。
Vitrification in Plant Tissue culture, Roberto Rodríguez et al., Springer-Vertlag US, 1990.
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-05-03
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