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植物に塩水を加えるとかれるのはなぜ??

質問者:   中学生   駒井健也
登録番号0327   登録日:2005-08-04
植物に塩水を加えると1日で枯れてしまったんですけど何か原因はあるんですか??
駒井健也 君
 
どうして「塩水」を植物に加えたのかな? 加えた「塩水」とはどんなものなのかな? 身の回りの「塩水」というと、食塩を溶かした水、みそ汁、醤油、海から汲んできた海水などいろいろ考えられますが、ここでは駒井君が「食塩水を植物に加えたらどうなるのかな?」という疑問の答えを得ようと夏休みに実験してみた、という前提でお答えします。かなり難しい事柄も含まれている質問ですが、中学生向きの易しい説明にとどめます。

植物は根から水や養分を吸収していますね。水の吸収と言うことは、土壌中の水(水耕の場合は水耕液の水)が根の中(実際は根の細胞の中)へ入ることです。根の細胞の中にもいろいろな物質が溶けた水溶液があります。土壌の中の水にも養分などが溶けて水溶液となっています。ここで、水(水溶液)には「濃度の違う水溶液が接している-隣り合っている-と、濃度の薄い方から濃い方へ水分子が移動する」という性質があります。同時に、「溶けている物質の分子は濃度の濃い方から薄い方へ移動」します。その結果、隣り合っている濃度の違う水溶液は全体として同じ濃度の水溶液になろうとします。そこで、根細胞の中の水溶液と土壌中の水溶液の濃度を比べてみると、ふつうは土壌内水溶液の濃度の方が、根の細胞内水溶液の濃度よりもはるかに薄い状態にあります。ですから、土壌中の水は根の細胞の方へ移動します。根細胞内の水溶液と土壌水との間には、細胞を囲む細胞膜という膜がありますが、この細胞膜
は水の分子を通す性質を持っていますので、水は根の内側と外側の水溶液濃度差の大きさにしたがって強く水を吸収したり、弱く吸収したりすることになります。不思議なことに、植物細胞が水を吸収したり、排出したりするときにはエネルギーを使わないで、水そのものの物理的性質の力を利用しているのです。
さて、そこで駒井君が「植物に塩水を加える」と2つの理由で植物は枯れたと考えられます。第1に、塩水はまず土壌(水耕液)に入りますので根細胞の外側水溶液の濃度が高くなります。その結果、根細胞内よりも外側の水溶液の濃度が高いので、水は濃度の低い方つまり根細胞から、濃度の高い方つまり土壌側へと移動してしまい、植物は「脱水状態」になります。これが続けば植物は枯れてしまいます。注意深く観察していれば、塩水を与えた後しばらくすると、地上部の葉が萎れて"だらり"となったことに気がつくと思います。これは、植物体内の水分量が減少した証拠です。第2の理由は、食塩は塩化ナトリウムという化合物で、その水溶液ではナトリウムイオンと塩素イオンに分かれていますが、ナトリウムイオンは吸収されると植物に毒性を示す傾向があり、その毒性のために枯れることもあります。「1日で枯れてしまった」のは、きっとかなり濃い塩水を加えたのでしょう。その結果、急速に起こった脱水、大量のナトリウムイオンによる急性毒性の両方が重なったためと考えられます。
根の細胞内「水溶液」とか土壌中「水溶液」と表現を使いましたが、この「水溶液」(何かが溶けている水)はどんな物質の水溶液でも同じことです。市販の肥料(液体肥料や固形の化学肥料)は硫安(あるいは硝酸アンモニウムなど)、リン酸カリウムやその他植物の生育に必要な無機成分を固形成型したもの(化成肥料)や濃厚水溶液(液体肥料)です。使用法として、一定の面積にxxグラム散布とかyy倍希釈などと書かれています。「しばらく肥料をやらなかったから、少し濃い肥料を与えよう」とか「速く効かせよう」などと考えて指定以上の濃い肥料をやると、上に説明した理由で枯れたり、生育が極端に悪くなったります。
それでは、細胞内水溶液の濃度はどの位かというと、植物種によっても大きく違いますが平均すると、低いもので、0.59%食塩、6.8%砂糖(ショ糖)、3.6%ブドウ糖、高いものでは、1%食塩、12%砂糖(ショ糖)、6.3%ブドウ糖、などに相当します。
ですから、食塩の場合1%を越える濃度の塩水を与え続けると最後には枯れる計算になります。しかし実際には、ナトリウムイオンの毒性が加わりますので、もっと薄い濃度の食塩水でも具合の悪いことになります。
「植物に塩水を与えたらどうなるのか」と疑問をもつことは大切なことです。日本では余り問題になりませんが、世界では、降雨量が少なく農地にすることができない地域がたくさんありますし、いろいろな理由で砂漠化が進んでいる地域が広がっています。このような地域にいくらでもある海水を農業用水に使えたら素晴らしいことですね。しかし、海水を使うと作物は枯れてしまいます。そこで、植物に塩水を与えたらどうして枯れるのか、塩水でも生育できる作物を作れないだろうか、と研究をしている研究者が世界中にたくさんおります。海水の中や海水のかかるところでも生育している植物(海草類以外で)もたくさんありますので、このような植物の「耐塩性」の仕組みを利用しようとする試みもあります。

 今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)

<追加質問>
「植物以外でも木の枝でやってみたんですけど。植物みたいに倒れたり黒くなって腐ったりはありませんでした。」


駒井くん:
「木の枝」も植物なんですよ! 駒井くんは野菜のように柔らかい草の仲間だけが「植物」だと思っているのかな?「植物」というのはとても大きい仲間をさしています。水の中にいて顕微鏡でやっと見えるほど小さな「微細藻類」からマツ、スギ、サクラ、ケヤキの仲間までみな「植物」です。地上の植物は、1年あるいは2年ほどで地上部が枯れてしまうものなどを「草本植物」、何年も枯れず、茎は堅く丈夫になるものを「木本植物」などと分けています。草本植物の茎には少ないのですが、木本植物の茎や枝にはリグニンという物質が大量に蓄積します。そのため茎は堅く、丈夫になり、木材と呼ばれるようになります。ですから、木の枝を使ったときには、葉は枯れても茎はそんなに速く枯れず、また枯れても折れたり、倒れたりしません。

<追加質問>
「木の枝の葉っぱの部分は植物だったら黒くなって腐っていたんですけど黄色くなっていました。」

実験の方法がよく分からないのですが、草や野菜などの茎を切り取ってきて塩水に茎の切り口をさしたようですね。同じように「木の枝」を切り取ってその切り口を塩水につけた、と想像しました。草本でも木本でも、枝や茎を切り取って「生け花」のように水にさしておくと、やがて葉は黄色くなります。切り取ったために栄養分が供給されないので「栄養不良」になってしまうからです。このようなことを「老化」と呼んでいます。老化すると葉の葉緑素が分解され緑色がなくなるので黄色く見えてきます。この段階で病原菌などに感染しなければ、そのまま乾燥して「黄色い枯葉」になりますが、病原菌に感染すると、たいてい組織が柔らかくなって黒くなります。この状態を「腐る」とも言いますね。草本植物の葉は、木本植物の葉と比べると水分が多く、老化が始まると病原菌に侵されやすいので駒井くんが実験したときもそうなったのではないでしょうか。
 秋になると「紅葉」といって葉が黄色くなったり、赤くなったりする木がありますね。モミジの仲間はその代表かも知れません。秋に葉が落ちる「落葉樹」に多く見られる現象ですが、これも秋になると葉への栄養供給がとまり、葉緑素の分解して黄色色素が残るので黄色く見えたり、種類によっては赤色の色素を合成しはじめるからです。
JSPPサイエンス・アドバイザー
 今関 英雅
回答日:2009-07-03
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