質問者:
一般
アサガオ5号
登録番号3271
登録日:2015-05-07
アサガオについて大気汚染で被害ありの葉と無しの葉について気孔の数を数えたところ、被害ありの葉の方が数が多くなりました。みんなのひろば
植物の気孔の数と大気汚染
被害を受けている部分は全く機能していないのでしょうか?
大気汚染で葉の一部分の気孔が被害を受けてしまった場合その代償としてその葉の気孔の数が増えますか?
アサガオ5号さん:
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
大気汚染はいろいろな原因物質によるものがありますが、都会で問題になる光化学オキシダント、工業地帯では亜硫酸ガスや硫化水素などがあります。亜硫酸ガスは酸性雨の原因にもなります。最近話題になるPM 2.5や黄砂などの微粒子も気孔を詰まらせたり、汚染分子を吸着していたりして植物生育にも悪影響をもたらしています。
アサガオは大気汚染の指標植物の一つとして使われていますが、かなり調べましたが大気汚染によって気孔の数が増えると(変化)する観察報告はどの植物についても見当たりませんでした。気孔を観察すること自体は難しいことではありませんが、正常葉と汚染葉の気孔数の比較となると気孔ができる過程への影響を見るということになります。成葉ではすでに気孔が出来上がっていますので、汚染大気に触れたとしても数自体は変化しないはずです。気孔は若い葉で形成されますので汚染大気の影響を受けた若い葉が成葉になったときの数を測定することになります。そのため、葉の生育段階を揃え、多数の計測を行う必要があります。汚染を受けた若い葉はおそらく成葉にはならない(成葉になる確率が低い)でしょうから実験そのものがかなり難しいものです。大気汚染影響のほとんどの研究は、葉がどのような障害をどの程度受けるかについて調べたものです。葉緑体が分解されて白化したり褐変化したりする程度を測定しています。
植物の気孔の数(単位面積当たりの数)は種によって違うでしょうが、最近の研究では気孔の数は気孔形成を抑制するホルモンと、増加させるホルモンの二つの働きで調節されていることが明らかにされています。気孔はある一定の間隔で形成され、隣り合ってたくさんの気孔が密集することはありません。それは気孔分化を抑制するホルモンがある時期に出されている結果です。一方、気孔の形成を促進するホルモンも見つかっており、このホルモンが増えると気孔の数も増大することが確認されています。そのため、ある植物の気孔の数(密度)は気孔形成を抑制するホルモンと促進するホルモンのバランスで決められていると考えられています。
葉の被害を受けた部分の気孔は機能を失っていると考えられますし、被害を受けなかった部分が機能喪失した気孔を補うように正常な気孔数を増やすという応答もあり得ないと思います。ただし、生態的に、大気汚染がある地域に生育する植物の気孔数に影響をもたらすことは考えられます。登録番号1580で浅田先生が引用されているように亜硫酸ガスを噴出する火山性地域に生育する植物(長期間その環境に適応して生育している)ではそうでない地域に生育する植物よりも気孔密度が低いとする観察もあるようです(この原報告は確認できませんでしたが)。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
大気汚染はいろいろな原因物質によるものがありますが、都会で問題になる光化学オキシダント、工業地帯では亜硫酸ガスや硫化水素などがあります。亜硫酸ガスは酸性雨の原因にもなります。最近話題になるPM 2.5や黄砂などの微粒子も気孔を詰まらせたり、汚染分子を吸着していたりして植物生育にも悪影響をもたらしています。
アサガオは大気汚染の指標植物の一つとして使われていますが、かなり調べましたが大気汚染によって気孔の数が増えると(変化)する観察報告はどの植物についても見当たりませんでした。気孔を観察すること自体は難しいことではありませんが、正常葉と汚染葉の気孔数の比較となると気孔ができる過程への影響を見るということになります。成葉ではすでに気孔が出来上がっていますので、汚染大気に触れたとしても数自体は変化しないはずです。気孔は若い葉で形成されますので汚染大気の影響を受けた若い葉が成葉になったときの数を測定することになります。そのため、葉の生育段階を揃え、多数の計測を行う必要があります。汚染を受けた若い葉はおそらく成葉にはならない(成葉になる確率が低い)でしょうから実験そのものがかなり難しいものです。大気汚染影響のほとんどの研究は、葉がどのような障害をどの程度受けるかについて調べたものです。葉緑体が分解されて白化したり褐変化したりする程度を測定しています。
植物の気孔の数(単位面積当たりの数)は種によって違うでしょうが、最近の研究では気孔の数は気孔形成を抑制するホルモンと、増加させるホルモンの二つの働きで調節されていることが明らかにされています。気孔はある一定の間隔で形成され、隣り合ってたくさんの気孔が密集することはありません。それは気孔分化を抑制するホルモンがある時期に出されている結果です。一方、気孔の形成を促進するホルモンも見つかっており、このホルモンが増えると気孔の数も増大することが確認されています。そのため、ある植物の気孔の数(密度)は気孔形成を抑制するホルモンと促進するホルモンのバランスで決められていると考えられています。
葉の被害を受けた部分の気孔は機能を失っていると考えられますし、被害を受けなかった部分が機能喪失した気孔を補うように正常な気孔数を増やすという応答もあり得ないと思います。ただし、生態的に、大気汚染がある地域に生育する植物の気孔数に影響をもたらすことは考えられます。登録番号1580で浅田先生が引用されているように亜硫酸ガスを噴出する火山性地域に生育する植物(長期間その環境に適応して生育している)ではそうでない地域に生育する植物よりも気孔密度が低いとする観察もあるようです(この原報告は確認できませんでしたが)。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2015-05-12
今関 英雅
回答日:2015-05-12