一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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トマトの花について

質問者:   会社員   kuni
登録番号3274   登録日:2015-05-08
トマトの花(果房)についてですが
通常トマトは花(果房)がついたら葉が3枚展開してまた花がつく形をとります(花-葉-葉-葉-花)。
しかし、栽培していると「花-葉-花」となったり、「花-花」となり芽がなくなってしまうことがあります。
どうしてこのようになってしまうのでしょうか。
植物体内で何らかのバランスが崩れたのかと思うのですが、どういった機構で起こるのかわかれば、逆に管理の糸口になるかと思い、質問しました。

よろしくお願いします。
kuni 様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
トマトの栽培上の問題については、その方面の専門の方でないと分かりませんので、ここでは一般論としてお答えいたします。茎頂(頂芽:植物の茎軸の先端)では分裂組織と呼ばれる、細胞が新しく増えている場所があります。茎頂では通常将来葉になる葉原基が分化します。茎が伸びていくに従って原基は葉へと成長していきます。しかし、体内で、ある化学的信号がつくられると、この葉原基分化が花原基分化へと切り替わります(栄養成長から生殖成長への切り替え)。この信号はフロリゲン(花成ホルモン)と呼ばれています。フロリゲンがどのようにしてつくられるか。つまり,何が刺激となってフロリゲンの生成が始まるのか。また、その本体はなにかと言うことについては、本コーナー登録番号0311を読んだ後、登録番号1630をお読み下さい。日長によって花芽形成が決まる植物は多いのですが,普通に栽培されているトマトの花芽形成は日長に影響されないので、中性植物とよばれています。
植物は茎頂で花芽が形成されるとその頂芽は成長を終えることになります。だから、もし分枝がなく主軸一本の植物で茎頂に花芽が出来ると、その植物は一生を終わる事になる訳です。しかし,多くの植物は茎と葉の基部の上側に側芽ができて、これが花になったり、枝になったりします。枝は副茎軸ですから、主軸と同じ扱いです。このように、主軸の茎頂も副軸の成長も継続して大きくなっていく場合は単軸分枝と呼ばれています。トマトの場合は少し様相が変わっていて、主軸の茎頂で花芽形成が起きると、そこで,頂芽の成長は終わりますが、花芽の側に既に出来ている腋芽が主軸代わりとなって伸びていきます(仮軸分枝)。
さて、トマトで仮軸に何枚葉が付いたら花芽形成が起きるかということは、もし、トマトを完全に制御された定常的な生育条件下に置いたら、つまり、温度、光量,光質、栄養、水分などなどを一定にして栽培したら、多分この花芽形成は一定の周期的に起きるでしょう。おそらく遺伝的にある成長段階になると花芽形成の条件が整うのだと思います。しかし、植物の体内の生理的状況(例えばホルモンのバランスなど)はこれらの要因の変化で著しく影響を受けるのがふつうです。トマトの花房の先端に葉が出来てしまう現象がしばしば起きるようですが、これはチッソ過多が原因らしいです。あなたの栽培されているトマトで花芽形成のパターンに異常が起きるのは、何が原因かを特定することはできませんが、おそらく上に挙げた諸要因が関係しているものと思われます。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-05-11
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