一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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対生の形である理由は?

質問者:   中学生   ももた
登録番号3284   登録日:2015-05-23
対生はなぜ、二枚が向かい合わせな形なのですか?植物の生活にとってどのような利点で都合が良いといえますか?
ももた様
 みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問は大変難しい質問でしたが、東京大学付属植物園の杉山宗隆先生が回答をお寄せ下さいました。ちょっと難しいかも知れませんが、しっかり勉強して下さい。

【杉山先生からのご回答】
まず、葉の発生のし方から説明します。新しい葉のもと(これを葉原基と言います)は茎の頂点のすぐ近くに生じ、茎先端の成長に伴って、茎の頂点から遠ざかっていきます。茎頂部を上から見れば、葉原基ができる場所は、茎の頂点を中心とする小さな円(ここでは発生円と呼ぶことにします)の円周上に限られていると言えます。発生円の円周上のどこに葉原基ができるかは、すでにできて茎頂から遠ざかりつつある葉原基や、他の新しい葉原基との相互作用で決まります。葉原基はそれぞれが自分の近くに別の葉原基ができるのを妨げるような影響を周囲に及ぼします。先にできた葉原基からの抑制的な影響をあまり受けない場所が、発生円の円周上に現れると、そこに新しい葉原基ができます。発生円の大きさと抑制的な影響の強さがある適当な範囲内にあるときには、同時に2つの葉原基が発生円の円周上に生じます。この2つの葉原基の間にも互いを近くに寄せ付けない反発作用があるので、できるだけ遠くなるように、発生円の中心を挟んで正反対、つまり向かい合わせに葉原基が位置取ることになります。これが、対生で2枚の葉が向かい合わせである理由です。

次に、植物の生活にとって、2枚の葉が向かい合わせにできることの利点は何かということですが、これはちょっと難しい質問です。私はこの疑問に答えられるような研究を知りませんので、個人的な考えを書いてみます。2枚の葉が片寄ってできる場合と比べたときの向かい合わせの利点としては、葉の重みを茎の両側に均等に分散できること、葉の幅が広くても重なりにくく光を効率的に受け取れること、あたりが思いつきます。ただ、これらも節間の葉の配置次第です。例えば、個々の節では2枚の葉が片寄って着いていても、節ごとに片寄る方向が変わり、全体としてバランスが取れていれば、重みの分散についても、光を受け取る効率についても、特段の問題はなさそうです。おそらく2枚の葉が向かい合わせになることにそれほどの大きな利点はなく、上で説明したような発生の仕組みによってそうなっている、と理解してもらった方がいいと思います。

 杉山 宗隆(東京大学付属植物園)

JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2015-05-25