一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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サボテン(多肉植物)の光合成

質問者:   教員   ss
登録番号3285   登録日:2015-05-25
サボテンを素材にして、中学生の授業の単元を進めているものです。

蒸散を防ぐために、昼に気孔が閉じていることから、呼吸や光合成をしていないのかという展開となっていく予定です。
光合成はCAM光合成の理論のもとに、実験を行ったところよいデータが得られましたが、呼吸については実験で確認することができずに困っています。
夜に二酸化炭素を取り込んでリンゴ酸として蓄え、昼に光合成を行い、それによって発生した酸素で呼吸をしていると、いくつかの資料で見ましたが、それは正しいのでしょうか。また、生徒がそれを確認できる実験はあるのでしょうか。
よろしくお願いいたします。

ssさん

質問をありがとうございます。
この質問には東京大学の野口先生が下記の回答文を作成して下さいましたので参考になさって下さい。また、本コーナーには、登録番号1341,0908,0984など、CAM植物の光合成に関係したQ/Aがありますので、そちらの方も。
有機酸の蓄積や気孔の開閉について調べられましたか。

【野口 航先生からの回答】
私はCAM植物は専門ではありませんが、知っている範囲でお答えします。
呼吸を、ピルビン酸脱水素酵素とTCA回路からのCO2発生と、呼吸鎖電子伝達系によるO2消費に分けて考えます。

CAM植物は夜間気孔を開いて、リンゴ酸に炭素を蓄積します。おそらくその間、昼間に変換されたデンプンやリンゴ酸の一部が、ピルビン酸脱水素酵素やTCA回路に流れて、NADHとCO2が生じます。生じたNADHは呼吸鎖電子伝達系によって酸化され、ATPが取り出され、O2が消費されると考えられます。夜間、葉のO2消費速度を測れば、ほ
ぼ、呼吸鎖電子伝達系によるO2消費速度だと思われます。ピルビン酸脱水素酵素とTCA回路からのCO2発生を測定するのは難しいです。同時にPEPカルボキシラーゼによ
るCO2固定が起こっているためですし、ピルビン酸脱水素酵素とTCA回路から発生したCO2のほとんどがPEPカルボキシラーゼによって固定されると考えられるからです。

昼間は、夜間蓄積したリンゴ酸が脱炭酸され、デンプンが合成されます。リンゴ酸の脱炭酸で生じたピルビン酸(ME型の場合)やオキサロ酢酸(PCK型の場合)の一部が
ピルビン酸脱水素酵素やTCA回路に流れて、NADHとCO2が生じます。生じたNADHは呼吸鎖電子伝達系によって酸化され、ATPが取り出され、O2が消費されると考えられま
す。このO2消費速度を測定するのは、難しいです。同時に光合成電子伝達系で水が分解されてO2が発生しているためです。またピルビン酸脱水素酵素やTCA回路から生じ
たCO2を測定するのも、大量のリンゴ酸の脱炭酸から出るCO2発生に隠れて測定するのが難しいと思います。

光合成で生じたO2が、呼吸鎖電子伝達系でそのまま利用されているかはわかりません。
質問にお答えできているかわかりませんが、他にも疑問などございましたら、遠慮なくお知らせください。

 野口 航(東京大学大学院理学研究科生物科学専攻)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2015-05-27
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