たなか様

　質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。食料問題は人類の生存に関わる最も基本的なテーマです。これを解決するには如何に効率よく作物を栽培して生産性を高めることができるかという農業の在り方（技術など）を問わねばなりません。それらの方法としては、様々な悪環境への耐性を持つ品種、光合成能の高い品種、高栄養価の品種、生産効率の高い品種などなどの育種（遺伝子組替えも含めて）の様に植物自身の機能を変えていくことが必要ですが、ご質問にも関連する栽培技術の改善、新規開発なども重要です。しかし、食料危機の解決は基本的にはいろんな意味での高品質の作物を作ることではなくて、食料（家畜の飼料も含めて）をいかに大量にかつ安価に安定供給できるかにかかっていると思います。現在行われている精密農業や水耕栽培などは清浄、高品質のような食材を一年中安定して供給することには向いていますが、大量生産で自給力を高めることができるかどうかはコストーパーフォーマンスの事も考えないといけないのではないかと思います。
　前置きが長くなりましたが、ご質問の中の「植物体のみを育成する」ということは「植物の地上部だけを育てる」つまり根を除去してしまって、人工的な根と同じ機能を持つ装置を使って地上部だけを育てるということだと思います。植物体と言った場合は根も含めて植物全体です。
現時点ではお望みのような人工根はありません。植物は根を切り取って水や栽培液にさしておくと、不定根と呼ばれる根が再生してきます。挿し木の原理はこれです。植物は再生能力が高いのです。細胞一個からも個体を再生できます（このような力を全能性といいます）。植物の成長にとって根の成長はとても重要で、良く育つ植物は根も良く伸びて広がっています。作物の生産性を高めるのに、根系の十分な発達は重要な要因の一つです。実験室的に根の機能を代行する装置を開発することは技術的に可能かもしれませんが。ご希望のような形で実用に結びつくとはかんがえられません。