一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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受粉量と果実の重さ

質問者:   公務員   こうさく
登録番号3292   登録日:2015-06-07
着果した桃の果実をみると、幼果の段階でも、同じ枝にいろんなサイズのものがあります。なぜでしょう。
ひょっとして、桃などの果樹では、受粉した花粉の数が果実の大きさに影響を与えるのでしょうか?
ほ乳類のように卵子と精子が1対1で受精するのであれば、受粉量は関係ないように思えますが、学術的にみてどうなのでしょうか。
こうさく様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご存知のように花が受粉して受精が起こり、それが刺激となっていわゆる果実の成長が始まります。果実と言ってもいろいろ形態的には異なって多様です。果実の分類と花の構造、受精のメカニズムについてはネットで検索なさるか、図書館で参考書を読んで調べて下さい。モモはウメとかアンズと同じように種子(固い殻の内部に入っています)は一つです。つまり、一個の卵細胞と一個の精細胞が受精して胚ができ、種子が作られます。雌しべの柱頭にはいくつかの花粉が付きますが、どれかが花粉管を伸ばして卵細胞のある胚珠に到達し、そこで花粉管の中の精細胞が注入されて、受精が起きます。種子が沢山できる果実はその数だけ卵細胞があり、花粉が使われたということになります。したがって、どれだけ沢山花粉がついても、それが全部役に立つ訳ではありません。ご指摘のように動物の受精でもきわめて多数の精子の内一つだけが受精に成功します。花粉の数が果実のサイズに影響することはありません。もっとも、本来卵細胞は一個の植物でも、何かが原因で2個作られたため、種子が2個できることもあります。そのような場合、果実のサイズは一般に大きくなるようです。果実のサイズに差がでるのは、個々の果実の成長速度が同じではないからでしょう。早く受精が済んだ花では早く果実の成長がはじまるでしょう。果実の成長も植物の他の部分と同じで、細胞数の増加、細胞容積の増大を伴います。それには栄養の供給が必要です。その栄養は主として葉の光合成産物に依っていますから、それがどれだけ効率よく果実に送られるか(転流されるか)が成長の決めてになります。着果数が多いと、例え全ての果実の成長が同時に始まったとしても、果実間で養分の取り合いが生じる可能性があります。果実の栽培ではより大きい果実を得るために摘果という作業が行われるのはご存知だとおもいます。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-06-10
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