一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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雨の成長促進効果について

質問者:   会社員   sssss
登録番号3293   登録日:2015-06-09
先日、苗販売の店員さんとの会話の中で雨が降ると植物が急に大きくなるというものがありました。
その人曰く、雨には肥料成分が含まれているそうです。
半信半疑でしたが、庭のアサガオを見てみると確かに雨が降った後は急に大きくなっていました。
そこで水道水による潅水となにが違うのかを考え、いくつか仮説を立ててみました。
1.降水の過程で硝酸態窒素やアンモニア態窒素などが雨に溶け込み、肥料となって成長が促進された。
2.降水の過程で酸素が雨に溶け込み、根の呼吸を助け、成長が促進された。
3.この時期の昼間の日照は植物にとって強すぎるため、晴れの場合光合成が逆に抑制され、曇や雨の場合の方が光合成速度が大きくなった。
4.たまたま成長曲線上の大きくなるときに雨が降り、急に大きくなったように見えた。

どれが正しいのか気になるので回答をお願いします。
sssssさん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
植物、動物(昆虫、鳥)の行動(挙動)と気象現象とを結びつける民間伝説は多くありますが、科学的に証明(説明)されている言い伝えは多くありません。
さてご質問の「雨が降ると植物が急に大きくなる」原因は、ということですが「雨水」がミソで「水道水」ではダメということのようです。残念ながらこれを裏付けるような科学的根拠はありません。考えられることは、雨が降る前は好天気が続いていて植物、特に鉢植えの植物などは少しばかり水不足に陥って葉の張りが十分でないとき、雨が降れば植物は急速に吸水して張りが回復したので成長したように見えたのかもしれません。仮説4にあたるでしょうがこのようなことは水道水でも雨水でも同じ結果になると思われます。ただし、塩素分が多い水道水は長期間には成長に影響を及ぼすことは十分考えられます。
仮説1については、「雷の多い年は豊作」という言い伝えがあります。空中放電で窒素が硝酸イオンに酸化されることは実証されています。工業的に空中窒素を固定して多量のアンモニア製造が可能となり、化学窒素肥料や硝石などの鉱物窒素肥料が使用される前は土壌微生物による生物的窒素固定、空中放電による窒素固定が当時の植物の窒素源であったわけですから、地球的に見て雷の窒素供給量は無視できないものでした。農業に使用される窒素肥料のおよそ3%が空中放電(稲妻)による固定窒素量とされています。これらが雨によって地上に供給されるのですが、その量が人の感覚として捉えるられるほど作物の成長に影響するかは疑問です。 同じように「高圧鉄塔の付近のイネは成長がよい」というのがあります。この場合には局所的ですから硝酸供給による効果が感じられるかもしれせん。仮説2はまずないでしょう。土壌に過剰水分がないほうが根への酸素供給は高いはずです。仮説3については、幾つかの作物で「昼寝現象」と言われる、夏の晴天時、日照の強い時間帯に光合成が低下する現象が知られています。水分バランスの影響で気孔が閉じるためと考えられています。この時、雨が降ってもすぐに成長に影響が出るとは考えにくいものです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2015-06-11
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