質問者:
小学生
ねぶたっこ
登録番号0331
登録日:2005-08-09
酸性水は体に悪いといわれていたので、本当かどうか植物を育てて調べてみました。みんなのひろば
かいわれ大根を育てています
ph9のアルカリ水とph4の酸性水、ふつうの水道水と3種類の水でかいわれ大根を種から育ててみたんだけど、3日目現在、予想とは正反対に酸性水のかいわれ大根のほうが少し成長が早いようです。
このままでは、酸性水も特に影響ない感じですが、どうしてなのでしょう。
何かヒントがあったら教えてください。
ねぶたっこ さん:
面白い実験をしていますね。
質問にお答えするためにもう少し詳しいことを教えて下さい。
1. pH4,pH9の水はどのようにして作りましたか?
2. おそらく、脱脂綿、ティッシュペーパーかペーパータオルを何層か敷いてその上に種子を蒔いたのでしょうが、その時水はどの程度入れたのでしょうか?
a)ちょっとしめった程度(かたく絞った程度)
b)たっぷりの水で濡らしてから、器を傾けて自然に流れる水を除いた程度
c)蒔き床の上にひたひたに水がある程度
3. 3日目の観察結果ですが、「酸性水のときに成長が少し早い」と書いてありますが、水道水やpH9のときにはどうなっていたのですか?3日目だと蒸留水でも根の先が少し顔を出した程度だと思いますが、pH9でも種子は「芽を切って」いたのですか、それとも全然芽が出ていなかったのですか?
4. 本当は、もう少し後にどうなったのかを観察しないと結論は出せないと思いますので、この後、どうなったのか、教えて下さい。
5. 蒔いた種子は何処においておいたのですか?
a)室温で暗いところ
b)室温で室内照明程度のところ
c)室内で、よく日の当たる窓際
ねぶたっこさんからのご連絡:
・水は、家で使っているアルカリ水を作る機械で作りました。ついてきた試薬ではかったら、アルカリ水はPH9、酸性水はPH4でした。
・水の量は、かいわれ大根の種の袋についているのをみて、bにしました。
・水道水やアルカリ水も発芽していましたが、酸性水のほうがしっかりしていたように見えました。その後もぐんぐん伸びてきて、昨日は ついに逆転しました。アルカリ水や水道水はまっすぐにしっかり伸びていますが、酸性水はだんだん元気がなくなってくきが曲がってきました。今日は、もう食べられるぐらいの大きさになりましたが、酸性水の方はどれもばらばらに倒れかけています。今日の段階ではアルカリ水が水道水より少し元気な感じでした。
・まいた種は、一番涼しい部屋(といっても夏なので暑いですが)に、段ボール箱でふたをして暗くしておきました。くさらないように、水も余分な分は捨てて毎日かえました。
宿題のレポートは、この2,3日で変化が出てきたので、何とか書けそうな気がします。でも、予想外に酸性水の種が早く大きく成長したのでとても不思議に思いました。理由をぜひ教えてください。
それと、成長したかいわれ大根ですが、アルカリ水や水道水で育てたものは食べられそうですが、酸性水のほうはやっぱり食べない方がいいでしょうか。見た目からして食べる気がしませんが・・・。
回答よろしくお願いします。
ねぶたっこ さん:
実験のやり方についての問い合わせに詳しくお答えいただいて、かなり様子が分かってきました。しかし、なかなか難しい問題です。ご質問の主旨は「酸性水は体に悪いのに、カイワレダイコンで調べたら、発芽しはじめでは酸性水の方が速く成長したのはどうしてか?」ということのようですね。
結論をいいますと、お使いになった「酸性水」「アルカリ水」ではカイワレダイコンの発芽、成長に違いがでる理由ははっきりしません。
ただ一つヒントとして植物の茎の成長について「酸成長」ということがあります。カイワレダイコンでも構いませんが、暗いところで育てた(黄白色のもやしになる)芽生えの首の直ぐ下1cmくらいを切り取って水(pH 7.0)に浮かべて半日くらいおくと少し長さが長くなります(茎が成長するからです)。ところがpH 3〜5程度の酸性水に浮かべると、中性の水に浮かべたときよりももっと長くなります(成長が促進されるからです)。このように、酸性水に浮かべたときにおこる成長を「酸成長」といって、植物が生長する仕組みの一つと考えられています。このような実験をするときには、植物からしみ出る物質などで、酸性水のpHが変わらないような特別な水溶液(緩衝液)を使います。しかし、このような理由で「酸性水」での成長がよかったのだ、と結論することは大変無理なことなのです。
そのわけは:
ねぶたっこさんが使った家庭用浄水器(最近は整水器といっているようですね)で作った「酸性水」「アルカリ水」というのを私はよく知りませんでしたので家庭用整水器のメーカーに聞いたり、インターネットでいろいろ調べてみました。どうして「アルカリ水」や「酸性水」ができるのかはかなり難しく、またその理屈に納得のいかない点がいくつかありますので省きますが、水道水を電気的に分離して「より水素イオンの多い水(酸性水)」と「より水酸イオンの多い水(アルカリ水)」を作っていることのようです。ですから、「酸性度」とか「アルカリ性度」の強さがとてもとても弱いものです。このような水では、ほんの少しでも別の物質(pHに影響を与えるような物質)が加わるとpHは変わってしまうのです。
ねぶたっこさんは、このような「酸性水」「アルカリ水」にカイワレダイコンの種子を蒔き、毎日、水を取り替えましたね。種子は発芽するために水を吸ってふくらみます。それから種子の中で休眠していた植物の「赤ちゃん」が目を覚まして成長をはじめ、ふつうは根がまず種子の皮を破って外にでてきます。1日くらい遅れて小さな葉をつけた茎が顔を出して成長をはじめます。種子が水を吸ってふくらんだり、根が顔を出すと、植物はいろいろな物質を外に出し始めます。どんな物質をどの位出すかは植物の種類によって違いますが、例えば、水素イオン、カリウムイオン、アミノ酸、クエン酸やコハク酸などが微量ですが外に出されます。その結果、「酸性水」「アルカリ水」のpHは簡単に変わってしまって、みんな同じようなpHになることが予想されます。ですから、水道水、「酸性水」「アルカリ水」での発芽、成長に大きな違いがでる理由が今は分からない、というのが正直な答えなんです。ねぶたっこさん、毎日水を取り替えるとき、古い水のpHを測ったことがありますか?一度、測ってみて下さい。多分、みな同じようなpHになっていると思います。
でも、ねぶたっこさんの実験では、はじめは「酸性水」での成長が早く、後になると水道水、「アルカリ水」での成長はよいのに、「酸性水」では弱々しくなった、のが結果ですね。どうしたらよいのでしょうか?少し、長くなりますが私たちなら「次にどうするか」をお話しします。
生き物を相手にいろいろ研究をしていると、ねぶたっこ さんのような実験結果(どうしても今の知識では理由が判らない結果)がでることはたくさんあるのです。私も何度も経験しています。そういうときは、まず「最初の実験結果が、何度やっても同じ結果となる」ことを確かめます。つまり、まったく同じやり方を最低3度は繰り返して結果を確かめます。またそのとき、3種類の水のそれぞれについて、最低3つの容器で同じように種子を20個以上は蒔いて、合計9つの容器で実験を繰り返すのです。毎回同じ結果になれば、観察していることは「本当のことだ」と考え、その次に「どうしてそうなるのか」を調べるための次の実験を考えます。同じ結果が繰り返し起こらず、どれが「本当のこと」か分からないときには、使った3種類の水(整水器で作った水)には「違いは無い」と結論して終わりにします。
生き物はとても周りの環境に敏感ですので、ほんの僅かの違いでも違った反応をします。私たちが「まったく同じ操作」をしたと思っても実際は少し違っていることもあるのです。ですから、何回も繰り返し同じ実験をして確かめる必要があります。一回だけ実験をして「予想通りの結果」に安心していたら、進歩はありませんね。
最後に、「酸性水」で育てたカイワレダイコンは「見た目にも食べる気がしない」のであれば食べない方がよいと思います。弱々しく育ったり、長い間おいて半分黄色くなりかけたりした野菜類は栄養成分も変わっているので美味しいものではありません。食物は「薬」ではありませんので「食べる気がしない色、姿」の食物を食べる理由はないと私は思っています。
面白い実験をしていますね。
質問にお答えするためにもう少し詳しいことを教えて下さい。
1. pH4,pH9の水はどのようにして作りましたか?
2. おそらく、脱脂綿、ティッシュペーパーかペーパータオルを何層か敷いてその上に種子を蒔いたのでしょうが、その時水はどの程度入れたのでしょうか?
a)ちょっとしめった程度(かたく絞った程度)
b)たっぷりの水で濡らしてから、器を傾けて自然に流れる水を除いた程度
c)蒔き床の上にひたひたに水がある程度
3. 3日目の観察結果ですが、「酸性水のときに成長が少し早い」と書いてありますが、水道水やpH9のときにはどうなっていたのですか?3日目だと蒸留水でも根の先が少し顔を出した程度だと思いますが、pH9でも種子は「芽を切って」いたのですか、それとも全然芽が出ていなかったのですか?
4. 本当は、もう少し後にどうなったのかを観察しないと結論は出せないと思いますので、この後、どうなったのか、教えて下さい。
5. 蒔いた種子は何処においておいたのですか?
a)室温で暗いところ
b)室温で室内照明程度のところ
c)室内で、よく日の当たる窓際
ねぶたっこさんからのご連絡:
・水は、家で使っているアルカリ水を作る機械で作りました。ついてきた試薬ではかったら、アルカリ水はPH9、酸性水はPH4でした。
・水の量は、かいわれ大根の種の袋についているのをみて、bにしました。
・水道水やアルカリ水も発芽していましたが、酸性水のほうがしっかりしていたように見えました。その後もぐんぐん伸びてきて、昨日は ついに逆転しました。アルカリ水や水道水はまっすぐにしっかり伸びていますが、酸性水はだんだん元気がなくなってくきが曲がってきました。今日は、もう食べられるぐらいの大きさになりましたが、酸性水の方はどれもばらばらに倒れかけています。今日の段階ではアルカリ水が水道水より少し元気な感じでした。
・まいた種は、一番涼しい部屋(といっても夏なので暑いですが)に、段ボール箱でふたをして暗くしておきました。くさらないように、水も余分な分は捨てて毎日かえました。
宿題のレポートは、この2,3日で変化が出てきたので、何とか書けそうな気がします。でも、予想外に酸性水の種が早く大きく成長したのでとても不思議に思いました。理由をぜひ教えてください。
それと、成長したかいわれ大根ですが、アルカリ水や水道水で育てたものは食べられそうですが、酸性水のほうはやっぱり食べない方がいいでしょうか。見た目からして食べる気がしませんが・・・。
回答よろしくお願いします。
ねぶたっこ さん:
実験のやり方についての問い合わせに詳しくお答えいただいて、かなり様子が分かってきました。しかし、なかなか難しい問題です。ご質問の主旨は「酸性水は体に悪いのに、カイワレダイコンで調べたら、発芽しはじめでは酸性水の方が速く成長したのはどうしてか?」ということのようですね。
結論をいいますと、お使いになった「酸性水」「アルカリ水」ではカイワレダイコンの発芽、成長に違いがでる理由ははっきりしません。
ただ一つヒントとして植物の茎の成長について「酸成長」ということがあります。カイワレダイコンでも構いませんが、暗いところで育てた(黄白色のもやしになる)芽生えの首の直ぐ下1cmくらいを切り取って水(pH 7.0)に浮かべて半日くらいおくと少し長さが長くなります(茎が成長するからです)。ところがpH 3〜5程度の酸性水に浮かべると、中性の水に浮かべたときよりももっと長くなります(成長が促進されるからです)。このように、酸性水に浮かべたときにおこる成長を「酸成長」といって、植物が生長する仕組みの一つと考えられています。このような実験をするときには、植物からしみ出る物質などで、酸性水のpHが変わらないような特別な水溶液(緩衝液)を使います。しかし、このような理由で「酸性水」での成長がよかったのだ、と結論することは大変無理なことなのです。
そのわけは:
ねぶたっこさんが使った家庭用浄水器(最近は整水器といっているようですね)で作った「酸性水」「アルカリ水」というのを私はよく知りませんでしたので家庭用整水器のメーカーに聞いたり、インターネットでいろいろ調べてみました。どうして「アルカリ水」や「酸性水」ができるのかはかなり難しく、またその理屈に納得のいかない点がいくつかありますので省きますが、水道水を電気的に分離して「より水素イオンの多い水(酸性水)」と「より水酸イオンの多い水(アルカリ水)」を作っていることのようです。ですから、「酸性度」とか「アルカリ性度」の強さがとてもとても弱いものです。このような水では、ほんの少しでも別の物質(pHに影響を与えるような物質)が加わるとpHは変わってしまうのです。
ねぶたっこさんは、このような「酸性水」「アルカリ水」にカイワレダイコンの種子を蒔き、毎日、水を取り替えましたね。種子は発芽するために水を吸ってふくらみます。それから種子の中で休眠していた植物の「赤ちゃん」が目を覚まして成長をはじめ、ふつうは根がまず種子の皮を破って外にでてきます。1日くらい遅れて小さな葉をつけた茎が顔を出して成長をはじめます。種子が水を吸ってふくらんだり、根が顔を出すと、植物はいろいろな物質を外に出し始めます。どんな物質をどの位出すかは植物の種類によって違いますが、例えば、水素イオン、カリウムイオン、アミノ酸、クエン酸やコハク酸などが微量ですが外に出されます。その結果、「酸性水」「アルカリ水」のpHは簡単に変わってしまって、みんな同じようなpHになることが予想されます。ですから、水道水、「酸性水」「アルカリ水」での発芽、成長に大きな違いがでる理由が今は分からない、というのが正直な答えなんです。ねぶたっこさん、毎日水を取り替えるとき、古い水のpHを測ったことがありますか?一度、測ってみて下さい。多分、みな同じようなpHになっていると思います。
でも、ねぶたっこさんの実験では、はじめは「酸性水」での成長が早く、後になると水道水、「アルカリ水」での成長はよいのに、「酸性水」では弱々しくなった、のが結果ですね。どうしたらよいのでしょうか?少し、長くなりますが私たちなら「次にどうするか」をお話しします。
生き物を相手にいろいろ研究をしていると、ねぶたっこ さんのような実験結果(どうしても今の知識では理由が判らない結果)がでることはたくさんあるのです。私も何度も経験しています。そういうときは、まず「最初の実験結果が、何度やっても同じ結果となる」ことを確かめます。つまり、まったく同じやり方を最低3度は繰り返して結果を確かめます。またそのとき、3種類の水のそれぞれについて、最低3つの容器で同じように種子を20個以上は蒔いて、合計9つの容器で実験を繰り返すのです。毎回同じ結果になれば、観察していることは「本当のことだ」と考え、その次に「どうしてそうなるのか」を調べるための次の実験を考えます。同じ結果が繰り返し起こらず、どれが「本当のこと」か分からないときには、使った3種類の水(整水器で作った水)には「違いは無い」と結論して終わりにします。
生き物はとても周りの環境に敏感ですので、ほんの僅かの違いでも違った反応をします。私たちが「まったく同じ操作」をしたと思っても実際は少し違っていることもあるのです。ですから、何回も繰り返し同じ実験をして確かめる必要があります。一回だけ実験をして「予想通りの結果」に安心していたら、進歩はありませんね。
最後に、「酸性水」で育てたカイワレダイコンは「見た目にも食べる気がしない」のであれば食べない方がよいと思います。弱々しく育ったり、長い間おいて半分黄色くなりかけたりした野菜類は栄養成分も変わっているので美味しいものではありません。食物は「薬」ではありませんので「食べる気がしない色、姿」の食物を食べる理由はないと私は思っています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-07-03
今関 英雅
回答日:2009-07-03