一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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実生と挿し木、成長の違い

質問者:   会社員   樹
登録番号3311   登録日:2015-07-03
ツバキを育てています。実生と挿し木で育てた場合の成長速度、発根量、曲がり、の違いについて教えてください。
・成長速度、同じ年数を経過した場合、樹高、胴回りの違いに差が出るのか。
・発根量、発根量の違いがある場合、強風の態勢に違いがあるか。(沿岸部での防風林として栽培されているが、そのような使用目的の場合、実生、接ぎ木どちらが良いのか)
・曲がり、成長過程で曲がりが出やすいのはどちらか。

以上お願い致します。
またそのような研究データありましたらお願いします。
ツバキではなく常緑樹でのくくりでかまいません。
樹 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
林業分野におけるかなり専門的なご質問で、このコーナーが取り扱うことのできる範囲から外れていますので的確なお答えはできませんが、挿し木と実生の違いを中心にお答えします。ご存知とは思いますが、実生苗と挿し木苗との根本的な違いは根系の形状にあります。種子が発芽すると幼根が伸長して直根となり、それから側根が形成されます。そのため、実生苗は成長するに従い直根が地中深く根付くことになり根の役割の一つである地上部をしっかりと支えることになります。一方、挿し木苗では茎から発生する不定根とそれから派生する側根が根系形成の中核になりますので根系は土壌中に浅く広がるように発達します。地上部を支える役割が弱く、地上部が強風を受けると倒れやすいものです。一般には、苗の初期成長は実生苗の方が挿し木苗よりも良好である場合が多いようです。しかし、両者の根系の違いは、生育する環境条件(平地か傾斜地か、乾燥地か湿潤地か、富栄養地か貧栄養地かなどのほか種々の気候条件)が初期苗の成長に少なからぬ影響を与えると予想されます。そのため種、品種,植栽目的によって個々に実地環境条件で調査することが必要となります。接ぎ木苗の根系は実生苗の根系とほぼ同じと考えて差し支えないと思います。ただし、台木は種、品種が違うのが普通ですから、成長生理学の問題として実生苗、挿し木苗と接ぎ木苗とを比較することは大変難しいものです。また、実生苗は、その親が純系ではありませんので形質が安定していませんが、挿し木苗はクローンですから遺伝的特性が挿し木親の形質そのものを受け継いだ安定したものです。
植栽する目的によってどちらかを選ぶことになります。
スギとヒノキについての調査結果がありました。1例としてご参考になると思います。
http://ffpsc.agr.kyushu-u.ac.jp/kfs/kfr/61/bin090508142235009.pdf
JSPPサイエンスアドバイザー
今関  英雅
回答日:2015-07-07
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