一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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セレノシスティンのコード能力、合成能力について

質問者:   自営業   jepenses
登録番号3313   登録日:2015-07-09
今回、植物がセレノシスティンと言う第21番目のアミノ酸をコード化、また合成出来るかどうか、一部の植物名でも良いですが、この能力を有するかどうか、お聞きしたく思います。
現在、判明出来ている範囲の御答えで、結構ですから、教えて頂ければ幸いです。

最近、ウィキペディアで、セレノシスティンについて検索してみたら、

セレノシステインは、普通はストップコドンとして使われるUGAコドンによって、特別の方法でコードされる。すなわち mRNA中の UGAコドンはSecIS(SElenoCysteine Insertion Sequence、セレノシステイン挿入配列)がある場合にのみセレノシステインをコードする。SecISは特徴
的なヌクレオチド配列と塩基対パターン(二次構造)で決められる。

また真正細菌では SecIS は mRNA の翻訳領域内、目的とする UGAコドンのすぐ次に位置している。古細菌と真核生物では SecIS は mRNA の 3' 非翻訳領域にあり、複数の UGAコドンにセレノシステインをコードさせることができる。また古細菌では 5' 非翻訳領域に SecIS がある例が少なくとも1つ知られている。
セレンがない場合には、セレノプロテインの翻訳は UGAコドンで終止し、短くて機能のないタンパク質ができる。

と言った記載がありました。

このような事から、私は、植物にも、20種類のアミノ酸の他にも、第21番目のアミノ酸と呼ばれるセレノシスティンを合成出来る能力を持つ可能性を有するのかと漠然的な考えを勝手に抱いています。

ヒトのセレノシステイン合成能力についても、最近知ったのですが、上記の様な、 SecISがコード化には関係している事。そして活性酸素の除去に関わっていると言われているグルタチオンペルオキシターゼと言う酵素には、セレノシスティンが含まれていると言う事を最近になって知りました。
恥ずかしい事に、大部前の、セレノシスティンをコード化するの力、合成する能力は古細菌と呼ばれる微生物だけに備わった能力であり、他の原核細胞生物、そしてヒトや植物、酵母、糸状菌などの真核細胞生物はコード化も合成も出来ないと言う説をかたくなに守って来た感がありました。

さらには、今回の質問とは関係はないですが、2年前に、理研の前理事長、野依良治さん、東京大学(濱田純一総長)、そして理研生命分子システム基盤研究領域の横山茂之領域長(横山茂之領域長、現:横山構造生物学研究室 上席研究員)、東京大学分子細胞生物学研究所の伊藤弓弦助教らと米国イェール大学による共同研究により、

バクテリアにおける「21番目のアミノ酸」と呼ばれるセレノシステイン(Sec)の合成メカニズムを解明した。またヒトを含めた真核生物とアーキアのグループ(ヒト型)とバクテリアのグループ(バクテリア型)では、その合成メカニズムが異なる。

との記載を理研の広報で見つけました。もう二年前の記事だったようですが。
jepennses 様

質問コーナーへようこそ。歓迎致します。一般の方が植物のセレノシスティンにご関心があるとのこと、珍しいですね。植物は生長のためにSeは必要ないですが、周囲の土壌から体内へ吸収はします。SeはSの輸送や経路を利用して体内で有機セレンに転換される様です。たとえば、アブラナ科の植物は多量にSe化合物を蓄積します。その一つはセレノシスティンです。セレノシスティンはSに代わって非特異的にタンパク質に取り込まれる様です。しかし、セレノシスティンが一般的に植物の遺伝子にコードされているかどうかはわかりません。現時点で調べた限り、クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardth) のグルタチオン・ペルオキシダーゼ(glutathionperoxidase) の中のopal codon (UGA)はSecytをコードしているという報告があります(文献1)。いわゆる高等植物では知られていません。
植物のSe 代謝についてはReview がありますので,読んで見て下さい。(文献2)
文献1: Lian-Hai Fu et al (2002) A selenoprotein in the plant lingdom. Jornal of Biological Chemistry 277:25983-25991.

文献2: Elizabeth A.H. Pilon-Smits and Colin F.Quinn (2010) Selenium metabolism in plants. In" Cell Biology of Metals and Nutrients, Plant Cell Monographs 17, Springer- Verlag, Berlin Heidelberg." (webでダウンロードで来ます)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-07-12
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