一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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コケ植物はなぜ種子を作らないのか

質問者:   中学生   きんにくん
登録番号3315   登録日:2015-07-13
コケ植物はなぜ種子を作らないのか具体的に教えてください
きんにくん様

ご質問どうも有難うございます。
熊本大学の澤進一郎先生と広島大学の嶋村正樹先生にご回答いただきました。

【澤先生、嶋村からの回答】
植物には,コケ植物やシダ植物のように胞子で増える植物と,裸子植物や被子植とよばれる種子で増える植物があります.植物が進化してきた過程で,まず,胞子で生殖する植物が現れ,種子で増える植物はその後に現れました.コケ植物は古い時代のやり方を今でも使い続けているのです.今でも,胞子を作る植物と種子を作る植物の両方がいるのは,胞子と種子にはそれぞれ異なる利点があるからです.胞子はただ一つの細胞でできた,1ミリにも満たない小さなものです.
一つの植物から何十万,何百万個も胞子を作ることができますので、多くの子供をのこせる可能性がある一方、胞子には栄養がほとんど無いので、自力で発芽し大きくなるのは難しい、という欠点があります.一方,種子は固い殻の中に,「胚」とよばれる次の世代の小さな植物をとじ込めた複雑で大きな構造です.種子には栄養分が多く含まれる場合も有り、自力で発芽したり、土壌中に栄養が無くても発芽してある程度まで大きくなることができます。このような理由などから、種子は胞子に比べて生存する能力が高いと考えられますが,胞子ほどたくさん作ることはできません.種子の方が、胞子よりも、大人にまで成長できる可能性が高いのですが、コケ植物のように小さな植物にとって,種子のように,大きくて複雑な構造の子供を作るのは大変で、効率のよいことではありません.また、植物の進化の歴史の中で、コケ植物が登場した時には、種子のような複雑な構造物を作るための遺伝子セットを、まだ持っていませんでした。そもそも,種子を作らない(作れない)ものをコケ植物やシダ植物と呼んでいます。質問にありましたように、「コケ植物はなぜ種子をつくらないか?」という質問に対しては、「コケ植物は種子を作れない」という答えが、最も適切な答えなのかもしれません。また、コケ植物が種子をつくったら,それは,「種子植物」でありもはや「コケ植物」とはよべないのです.

 澤 進一郎(熊本大学大学院自然科学研究科)、嶋村 正樹(広島大学大学院理学研究科)
JSPP広報委員長
松永 幸大
回答日:2015-07-20
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