質問者:
会社員
コーントレーダー
登録番号3319
登録日:2015-07-16
米国産トウモロコシの日本への輸出業務を担当しております者です。トウモロコシの収量を決定する最も重要な時期は受粉期間であり、受粉にとって水分不足および高温が最も悪影響を与えるとされています。受粉期に高温かつ乾燥した天候が続くと、受粉が失敗する確率が上がりトウモロコシの単収がたちまち低下してトウモロコシ価格が高騰する要因になります。なぜ、受粉期にトウモロコシは水分をより多く必要とするのでしょうか?また、受粉期に高温になると何が問題なのでしょうか?高温になると受粉に必要とされる酵素タンパク質の活性が低下するのでしょうか?ご回答頂けると幸甚です。
みんなのひろば
トウモロコシの受粉について
コーントレーダー様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。トウモロコシなど個々の作物の栽培条件や環境の影響等についての詳しい事情は、栽培学などで専門に研究されている農学分野の研究者に御聞きしないといけませんが、ここではすでにご存知だろうと思う事も含めてふつう説明されていることを紹介します。
植物の成長に大きな影響をもつ環境要因は光、温度、水ですが、これらの要因の適正範囲は植物の種類によって異なります。温度が低い方が良い種類もあれば、乾燥した状態の方が良い種類もあります。トウモロコシの生育には一般に気温が高く、光量が多い環境が適していますが、特に多くの水分を必要とします。トウモロコシは温度異常よりも水不足(water stress)の影響を大きく受けるようです。water stressを一番受け易い時期は受粉・授粉(pollination)に時期で、この時期は普段よりも多くの水分が必要です。次いで、穀粒(種子)の充実(成熟)時期、そして栄養成長期の順です。いずれにしろ、トウモロコシは栄養成長から生殖成長の時期に亘って、蒸散・蒸発による植物体からの水分消失量が土壌からの供給量を上回るとpollinationのみならず生育全体が負の影響を受け、結果的に生産が低下します。植物が根から吸水するという事は、水と一緒に土壌に含まれる無機栄養物質を吸収するという事ですから、吸水が大きい程栄養供給も大きいという事になります。また、水は主として細胞の中の液胞に貯蔵されて、細胞に張りをを与え(膨圧を高め)植物(草本)の形態の維持を可能にします。これらのことはトウモロコシだけでなく植物一般についても言える事です。
トウモロコシのpollinationの時期に起きることは、雄しべにおける花粉の飛散(shedding)および雌花における毛(silk、花柱、絹糸)の成長(出穂)です。この時期にwater stressがかかると、silkが十分形成されなかったり、成長(silking)が遅れたりします。silkは触ってみてみずみずしい事が分かりますが、そのような状態を保つためにそれだけ多くの水分が必要な訳です。silkの先端の柱頭で、花粉はここに付着して花粉管を伸ばしますが、乾燥状態になるとsilkは脱水状態になり、花粉は死滅する事になります。特に温度が高い条件下(35℃以上といわれています)ではそうなり易い。受粉の成功は花粉の飛散と絹糸の成長がシンクロナイズできるかどうかとも関係あります。高温自体はそれがwater stressと重ならない限りはそれほど影響は大きくない様です。土壌に十分な水があれば、花粉の飛散は通常朝のうちに起きるので、日中の高温はpollinationには対して影響はないといわれています。
温度が植物(他の生物もそうですが)の生命活動に影響するのは、生命活動が体内の生化学反応に基づいているからで、これらの反応は酵素よって触媒されています。したがって夫々の酵素にはその触媒作用の為に至適温度範囲が決まっています。その範囲を超えると反応は低下します。また、酵素はタンパク質なので、高温になりすぎると変性してしまいますので、その結果生命活動は終わる事にもなります。トウモロコシのpollination の時期になにか特定の酵素が温度の影響を受ける事があるのかどうかは分かりません。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。トウモロコシなど個々の作物の栽培条件や環境の影響等についての詳しい事情は、栽培学などで専門に研究されている農学分野の研究者に御聞きしないといけませんが、ここではすでにご存知だろうと思う事も含めてふつう説明されていることを紹介します。
植物の成長に大きな影響をもつ環境要因は光、温度、水ですが、これらの要因の適正範囲は植物の種類によって異なります。温度が低い方が良い種類もあれば、乾燥した状態の方が良い種類もあります。トウモロコシの生育には一般に気温が高く、光量が多い環境が適していますが、特に多くの水分を必要とします。トウモロコシは温度異常よりも水不足(water stress)の影響を大きく受けるようです。water stressを一番受け易い時期は受粉・授粉(pollination)に時期で、この時期は普段よりも多くの水分が必要です。次いで、穀粒(種子)の充実(成熟)時期、そして栄養成長期の順です。いずれにしろ、トウモロコシは栄養成長から生殖成長の時期に亘って、蒸散・蒸発による植物体からの水分消失量が土壌からの供給量を上回るとpollinationのみならず生育全体が負の影響を受け、結果的に生産が低下します。植物が根から吸水するという事は、水と一緒に土壌に含まれる無機栄養物質を吸収するという事ですから、吸水が大きい程栄養供給も大きいという事になります。また、水は主として細胞の中の液胞に貯蔵されて、細胞に張りをを与え(膨圧を高め)植物(草本)の形態の維持を可能にします。これらのことはトウモロコシだけでなく植物一般についても言える事です。
トウモロコシのpollinationの時期に起きることは、雄しべにおける花粉の飛散(shedding)および雌花における毛(silk、花柱、絹糸)の成長(出穂)です。この時期にwater stressがかかると、silkが十分形成されなかったり、成長(silking)が遅れたりします。silkは触ってみてみずみずしい事が分かりますが、そのような状態を保つためにそれだけ多くの水分が必要な訳です。silkの先端の柱頭で、花粉はここに付着して花粉管を伸ばしますが、乾燥状態になるとsilkは脱水状態になり、花粉は死滅する事になります。特に温度が高い条件下(35℃以上といわれています)ではそうなり易い。受粉の成功は花粉の飛散と絹糸の成長がシンクロナイズできるかどうかとも関係あります。高温自体はそれがwater stressと重ならない限りはそれほど影響は大きくない様です。土壌に十分な水があれば、花粉の飛散は通常朝のうちに起きるので、日中の高温はpollinationには対して影響はないといわれています。
温度が植物(他の生物もそうですが)の生命活動に影響するのは、生命活動が体内の生化学反応に基づいているからで、これらの反応は酵素よって触媒されています。したがって夫々の酵素にはその触媒作用の為に至適温度範囲が決まっています。その範囲を超えると反応は低下します。また、酵素はタンパク質なので、高温になりすぎると変性してしまいますので、その結果生命活動は終わる事にもなります。トウモロコシのpollination の時期になにか特定の酵素が温度の影響を受ける事があるのかどうかは分かりません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-07-26
勝見 允行
回答日:2015-07-26