一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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挿し木の活着について

質問者:   自営業   星の王子
登録番号3321   登録日:2015-07-19
毎年少しずつですが挿し木で樹木を増やしています。そこで活着について教えて下さい。スギやヒノキを挿し木をする場合、同じ親木から採穂し、同じ経過をたどり、まったく同じ挿し床に挿し、その後の管理も同じくしているのに
隣あった2本で活着が異なることが良くあります。そこで質問ですが、挿し木で活着するかしないかを決める、植物側の要因で大きなものはなんでしょうか?管理する側としては「全く同じ」にしているつもりでも、植物側にしてみると大きな違いと受け取る何かがあるのでしょうか?よろしくお願いします。
星の王子 さま

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
1個体の植物であっても各部位の齢や周辺の微環境は同一ではありません。したがって、各部位の生理状態も個体全体で同一ではありません。仮に厳密な実験的環境条件においたとしても1個体の各部位の生理状態は同一にはなりません。挿し木繁殖の場合「活着率」とか「発根指数」といったことが問題になりますが、それは同じ(と思っている)挿し穂の生理状態はすべて同じではないからです。挿し木の場合は、茎からの不定根発生が初期段階として重要な要素です。不定根の形成には、挿し穂のホルモンバランス、栄養状態がまず重要な要因となっています。挿し穂が切り取られた時の生理状態が異なれば、見かけの形状は同じでも各挿し穂のホルモンバランス、栄養状態は異なることが予想されます。また、挿し穂を切り取るときの母木、母枝の年齢も大きな影響をもたらします。これは栄養成長が盛んな枝か、花芽形成が始まった枝かによって切り出した挿し穂の栄養状態が異なり発根能に差が現れることによります。一般には栄養成長が盛んな挿し穂ではホルモン形成能も高く、栄養供給も十分なので発根率が高いようです。多くの植物には発根形成を阻害するような物質が含まれています。
そのような物質の含量が高い種、品種では不定根形成はよくありません。挿し穂の生理状態によってはこのような物質の含量が変動している可能性が高く、挿し穂個体によって発根率が異なってきます。
このように、挿し穂の外見が同じようでも、挿し穂個体ごとに生理状態が異なっていますので同じ挿し床で、同じ環境においたとしても個体ごとの発根率、つまり活着率は同じにならないのが普通です。「全く同じ」にしているつもりでも「全く同じ」ではないのです。発根促進剤と称する成長調整剤が市販されていますが、微妙な生理状態の違いを乗り越えて発根率を高める(通常は同時に殺菌剤も含まれていますので感染を抑える効果もあります)効果があります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2015-07-21
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