質問者:
一般
きっき
登録番号3327
登録日:2015-07-29
小学生の子どもと、アサガオを育てています。みんなのひろば
アサガオの色素について
青紫色のアサガオです。
先日観察していたところ、水やりをして、花びらに水滴が当たった部分だけ、ぽつぽつと斑点状にピンク色になっていました。
もう一度、今度はあえて花びらに水(水道水)を撒いてみたのですが、
1.水を撒いてすぐに花びらがクタッとなりました。
2.10分もしないうちに、水滴の当たった部分がピンク色になりました。(水滴の中央部でなく、周辺部から変色していくことも不思議に思いました。)
今度は、花びらを取ってきて、そのまま揉んだりせずに、水に浸しておきました。
すると、花びらは少しずつピンク色に変化しました。また、1時間くらいすると、花をつけておいた水が青色になりました。花の色素(アントシアニン?)が水に溶けだしたのかなと思いました。
調べていて、アントシアニンは水溶性だということがわかりましたが、通常の水やりで、花に水がかかったくらいでも、溶けだしてしまうのでしょうか?
また、切った花を水に浸し、しばらく置くとクチャクチャになってしまうことから、花びらの細胞は壊れやすいのかな?と疑問に思いました。
アサガオに限らず、水を当てるとしおれてしまう花は多いと思いますが、どのようなメカニズムで花がしおれてしまうのでしょうか?
きっき様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
ご質問について、花の色素の研究をされている名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科学専攻の吉田久美先生に回答をお願いしました。
花を切り取って水に浸すと形が崩れてしまう事があるのは、物理的(機械的)な理由だと思います。形が崩れるのは花弁が薄い花です。ユリやツバキの花などは花弁が固い(機械的に強い)ので原型を保っているはずす。花を水に浸すと表皮から水が中の組織に浸水していきます。その結果細胞は水を吸ってはち切れるような状態になりますから、機械的に弱い造りの花弁では、花弁内の細胞間で生じる部分的な力(膨圧という)の歪みや、周囲の水圧とのバランスで形が崩れるのではないでしょうか。また、打ち水をして形が崩れるのは単に外部から機械的な力を加えたからでしょう。花は繊細なものが多いですから優しく扱ってあげましょう。
【吉田先生からの回答】
質問コーナーへのアクセスをありがとうございます。
いくつかご質問がありますが、私は色素の研究者で、花弁の組織については専門外のものもありますので、分かる範囲でお返事いたします。
アサガオの花に限らず多くの花では、色素は花弁の表側と裏側の表皮の細胞にある液胞という体積からいえば90%以上を占める細胞内小器官(細胞内にもうひとつ袋があると理解ください)の中に溶けています。
青紫色のアサガオのつぼみをご覧になったことがありますか?多分その時の色は、咲いた時と比べて若干赤っぽいかと思われます。
(アサガオの品種によります)
アントシアニンにもいろいろ種類がありますが、アントシアニン全般の特徴として液胞の水素イオン濃度(pH:酸性かアルカリ性かを示す指数で、7が中性、7以下が酸性、7以上がアリカリ性)の違いによって発色が変わります。酸性条件では赤色に、アリカリ条件では青色になります。
アサガオでは、つぼみの時は液胞は若干酸性側、咲くとアルカリ性側へと変化します。そのため、つぼみは赤く、咲くと青くなります。
開いた花の細胞でアルカリ性が保たれるためにはエネルギーの供給が必要で、細胞は元気でないとだめです。だから、細胞が死んだり、水分を失ったり(しぼむ)すると、また色は赤色にもどります。
今回水が当たった組織の部分がピンク色になったということは、花弁の細胞組織が何らか障害を受けて、液胞内のpHが酸性になってしまったことを示しています。
自然でも酸性雨があたると、やはりその部分だけが赤く変色します。これを利用して実際にアサガオの花は酸性雨の検出にも使われます。
しかし、水道水が特別に酸性とは考えられませんから、水があたって機械的に組織の膜構造が障害を受けたか壊れたかして、水素イオン濃度をアルカリ性に保つ仕組みが障害されてしまったのか、内側の無色の細胞液と混ざってしまったかのいずれかだと考えます。詳しくは、その花を見てみないとわかりません。
咲いたアサガオの花をビニール袋で覆って、その中にドライアイスを入れてやると液胞内に炭酸ガスが溶けて酸性になるため、同様に赤色に変色します。試してみて下さい。
吉田 久美(名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科学専攻)
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
ご質問について、花の色素の研究をされている名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科学専攻の吉田久美先生に回答をお願いしました。
花を切り取って水に浸すと形が崩れてしまう事があるのは、物理的(機械的)な理由だと思います。形が崩れるのは花弁が薄い花です。ユリやツバキの花などは花弁が固い(機械的に強い)ので原型を保っているはずす。花を水に浸すと表皮から水が中の組織に浸水していきます。その結果細胞は水を吸ってはち切れるような状態になりますから、機械的に弱い造りの花弁では、花弁内の細胞間で生じる部分的な力(膨圧という)の歪みや、周囲の水圧とのバランスで形が崩れるのではないでしょうか。また、打ち水をして形が崩れるのは単に外部から機械的な力を加えたからでしょう。花は繊細なものが多いですから優しく扱ってあげましょう。
【吉田先生からの回答】
質問コーナーへのアクセスをありがとうございます。
いくつかご質問がありますが、私は色素の研究者で、花弁の組織については専門外のものもありますので、分かる範囲でお返事いたします。
アサガオの花に限らず多くの花では、色素は花弁の表側と裏側の表皮の細胞にある液胞という体積からいえば90%以上を占める細胞内小器官(細胞内にもうひとつ袋があると理解ください)の中に溶けています。
青紫色のアサガオのつぼみをご覧になったことがありますか?多分その時の色は、咲いた時と比べて若干赤っぽいかと思われます。
(アサガオの品種によります)
アントシアニンにもいろいろ種類がありますが、アントシアニン全般の特徴として液胞の水素イオン濃度(pH:酸性かアルカリ性かを示す指数で、7が中性、7以下が酸性、7以上がアリカリ性)の違いによって発色が変わります。酸性条件では赤色に、アリカリ条件では青色になります。
アサガオでは、つぼみの時は液胞は若干酸性側、咲くとアルカリ性側へと変化します。そのため、つぼみは赤く、咲くと青くなります。
開いた花の細胞でアルカリ性が保たれるためにはエネルギーの供給が必要で、細胞は元気でないとだめです。だから、細胞が死んだり、水分を失ったり(しぼむ)すると、また色は赤色にもどります。
今回水が当たった組織の部分がピンク色になったということは、花弁の細胞組織が何らか障害を受けて、液胞内のpHが酸性になってしまったことを示しています。
自然でも酸性雨があたると、やはりその部分だけが赤く変色します。これを利用して実際にアサガオの花は酸性雨の検出にも使われます。
しかし、水道水が特別に酸性とは考えられませんから、水があたって機械的に組織の膜構造が障害を受けたか壊れたかして、水素イオン濃度をアルカリ性に保つ仕組みが障害されてしまったのか、内側の無色の細胞液と混ざってしまったかのいずれかだと考えます。詳しくは、その花を見てみないとわかりません。
咲いたアサガオの花をビニール袋で覆って、その中にドライアイスを入れてやると液胞内に炭酸ガスが溶けて酸性になるため、同様に赤色に変色します。試してみて下さい。
吉田 久美(名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科学専攻)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-08-02
勝見 允行
回答日:2015-08-02