一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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クロロフィルの変性について

質問者:   会社員   ぷぅ
登録番号3329   登録日:2015-07-31
ビタミンには脂溶性と水溶性があるということで、先日それら成分について簡単な実験を行いました。

手順は、
ホウレンソウをフードプロセッサーで粉砕して、サラダ油で煮ました。その後、コーヒーフィルターを用いて濾過したものを、放置すると、2層(上が油、下が水)に分かれました。

上層は最初は鮮やかな緑色、下層は濁った黄緑色でした。
おそらく上層にカロテンやクロロフィルなどの脂溶性成分、下層にビタミンCなどの水溶性成分が分離されたのだと思っています。
ちなみにこの時に375nmの波長のUV-LEDライトを当てると、上層は赤い蛍光を、下層は弱い黄緑の蛍光を呈しました。

そして2~3日後、再び溶液を観察すると、上層の鮮やかな緑色はくすんでしまいました。下層も少しくすんでいました。
同じようにライトを当てると、上層の赤の蛍光はほとんどなくなりました。下層の黄緑の蛍光はまだ残っています。

これら結果から、何らかの要因でクロロフィルが変性してしまったのかな、と思っています。
この「何らかの要因」のところが知りたいのですが、教えていただけませんでしょうか。
ぷぅ 様

このコーナーに質問をお寄せ下さり有り難うございました。少し遅くなりましたが、この質問にはクロロフィル類について詳しい筑波大学の小林正美先生が回答文を用意して下さいましたので、ご参考にして下さい。

【小林先生からの回答】
「油」に溶けたクロロフィルはとても不安定で、脱色が早いことが知られています。
市販の食用油には様々な物質が溶けていることがその一因です。クロロフィルの脱色の早さは、油の種類にも大きく依存しますので、様々な油で試してみてください。油の中で最初に起こるクロロフィルの劣化は、クロロフィルの中心金属であるMgが脱離する「フェオフィチン化」です。ただ、Mgが外れても、UV照射によって赤く強い蛍光は出ます。意外なことに、緑果エキストラバージンオリーブオイルなど緑色に見える高級なオリーブオイルでも、溶けているクロロフィルはほとんどフェオフィチン化しています。

今回、サラダ油を用いて、「高温」でクロロフィルを抽出していますので、「油の劣化(酸化)」も進んでおり、常温の油にクロロフィルを溶かしたときよりもクロロフィルの脱色(環構造の破壊)は加速されています。「加熱」によって、油に「過酸化物」が生じると、クロロフィルの環構造の破壊が早まるからです。

また、暗所でなく蛍光灯など「光」があたる状態で放置すると、光劣化(主として酸化反応)も同時に起きるため、クロロフィルの脱色は著しく加速されます。

 小林 正美(筑波大学応用物理学類・物質工学域)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2015-08-20
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