質問者:
会社員
NAX
登録番号3335
登録日:2015-08-02
日本で生産量が高い植物上位5種は何なのでしょうか。みんなのひろば
生産量が最も高い植物
山ばかりの我国の登山に行くとどこでもシダと笹がかなりの標高でも目につき疑問に感じました。
回答のほどよろしくお願いします。
NAXさま
みんなのひろばへのご質問有り難うございました。頂いたご質問の回答を東京大学の寺島一郎先生にお願い致しましたところ、自然環境下での生産量、農地での生産量を数値を上げてお教え下さいました。参考にして下さい。
【寺島先生のご回答】
1964~1974年に実施された国際生物学事業計画で、世界中の自然生態系や農地生態系の生産力の測定が行われました。日本で、門司正三、佐伯敏郎、吉良竜夫、佐藤大七郎、村田吉男などが主導して、世界的に見ても高いレベルの研究が行われました。
生産力には、総生産と純生産があります。植物が光合成によって固定した有機物量を総生産とよびます。それから植物の呼吸によって失われた有機物量を引いたものを純生産とよびます。
すなわち、
純生産= 総生産 - 呼吸。
通常生産力というと純生産のことをさします。
日本の生産量が高い植物上位を挙げよとのことですが、例えば同じ木の森でも、純生産は林齢によって異なります。たとえば、一種の樹木を植えた人工林ではお互いの樹冠が接するようになるころに純生産量が最大になります。それまでは、エネルギー源の光の吸収が少なく総生産が小さいのです。いったん樹冠が接するとそれ以降、受光量はほとんど変化しないので、総生産もあまり変化をしません。ところが、樹木の成長にともない、光合成を行う葉の量は増えませんが、呼吸しかしない幹や根が大きくなります。このため呼吸量が増えて、純生産は減ります。
純生産のデータとしては、九州のスギの密植若齢林で4.4 kg 植物体乾燥重量/m2/年、長野や栃木のアカマツ若齢林でも2 kg /m2/年を越えます。暖温帯の照葉樹林の若齢林もだいたい2 kg /m2/年程度の純生産を示します。
植物同士が光をめぐる高さの競争をすれば、草本植物は樹木にはかないません。しかし、樹木は、高さをかせぐからこそしっかりした幹や根をもたなくてはなりません。このため、総生産に対する呼吸の割合は大きくなります。水分が欠乏する、栄養が乏しい、攪乱を受けやすい、寒冷が長期に及ぶ、など条件下では樹木の生育が難しくなり、変わって草本植物が生育します。草本植物は総生産に対する呼吸の割合が樹木より小さいので、少々のストレス条件下でも十分に純生産が可能です。記録としては、チシマザサ(北海道ニセコの1.6 kg /m2/年、利根川河川敷のセイタカアワダチソウ(利根川河川敷)の 1.8 kg /m2/年の記録があります。一般のススキ草原の生産量は、0.6~1.2 kg /m2/年程度です。ワラビやウラジロは純群落をつくるので誰かが調べただろうとデータを捜しましたが、今のところ見つけることができていません。生産力はススキほどではないだろうと思います。
もちろん、農地として管理すれば草本植物をよい条件で育てることができます。C4草本のネピアグラス(プエルトリコ)で8.6kg /m2 (12ヶ月生産を続けるわけではないので、/年を省略しました)、サトウキビ(ハワイ)でも6.71kg /m2の記録があります。日本のイネでは2.6 kg /m2程度が最高のようです。もっとも二毛作、二期作などが可能なことを考えると、実際にはこれよりも大きな生産力をあげることが可能です。植物の生産については、「湿原の純生産量はなぜ大きいのでしょうか」にも解説があります。
主に、岩城英夫 編著 (1979)「群落の機能と生産」 朝倉書店 を参考にしました。
寺島 一郎(東京大学大学院理学系研究科)
みんなのひろばへのご質問有り難うございました。頂いたご質問の回答を東京大学の寺島一郎先生にお願い致しましたところ、自然環境下での生産量、農地での生産量を数値を上げてお教え下さいました。参考にして下さい。
【寺島先生のご回答】
1964~1974年に実施された国際生物学事業計画で、世界中の自然生態系や農地生態系の生産力の測定が行われました。日本で、門司正三、佐伯敏郎、吉良竜夫、佐藤大七郎、村田吉男などが主導して、世界的に見ても高いレベルの研究が行われました。
生産力には、総生産と純生産があります。植物が光合成によって固定した有機物量を総生産とよびます。それから植物の呼吸によって失われた有機物量を引いたものを純生産とよびます。
すなわち、
純生産= 総生産 - 呼吸。
通常生産力というと純生産のことをさします。
日本の生産量が高い植物上位を挙げよとのことですが、例えば同じ木の森でも、純生産は林齢によって異なります。たとえば、一種の樹木を植えた人工林ではお互いの樹冠が接するようになるころに純生産量が最大になります。それまでは、エネルギー源の光の吸収が少なく総生産が小さいのです。いったん樹冠が接するとそれ以降、受光量はほとんど変化しないので、総生産もあまり変化をしません。ところが、樹木の成長にともない、光合成を行う葉の量は増えませんが、呼吸しかしない幹や根が大きくなります。このため呼吸量が増えて、純生産は減ります。
純生産のデータとしては、九州のスギの密植若齢林で4.4 kg 植物体乾燥重量/m2/年、長野や栃木のアカマツ若齢林でも2 kg /m2/年を越えます。暖温帯の照葉樹林の若齢林もだいたい2 kg /m2/年程度の純生産を示します。
植物同士が光をめぐる高さの競争をすれば、草本植物は樹木にはかないません。しかし、樹木は、高さをかせぐからこそしっかりした幹や根をもたなくてはなりません。このため、総生産に対する呼吸の割合は大きくなります。水分が欠乏する、栄養が乏しい、攪乱を受けやすい、寒冷が長期に及ぶ、など条件下では樹木の生育が難しくなり、変わって草本植物が生育します。草本植物は総生産に対する呼吸の割合が樹木より小さいので、少々のストレス条件下でも十分に純生産が可能です。記録としては、チシマザサ(北海道ニセコの1.6 kg /m2/年、利根川河川敷のセイタカアワダチソウ(利根川河川敷)の 1.8 kg /m2/年の記録があります。一般のススキ草原の生産量は、0.6~1.2 kg /m2/年程度です。ワラビやウラジロは純群落をつくるので誰かが調べただろうとデータを捜しましたが、今のところ見つけることができていません。生産力はススキほどではないだろうと思います。
もちろん、農地として管理すれば草本植物をよい条件で育てることができます。C4草本のネピアグラス(プエルトリコ)で8.6kg /m2 (12ヶ月生産を続けるわけではないので、/年を省略しました)、サトウキビ(ハワイ)でも6.71kg /m2の記録があります。日本のイネでは2.6 kg /m2程度が最高のようです。もっとも二毛作、二期作などが可能なことを考えると、実際にはこれよりも大きな生産力をあげることが可能です。植物の生産については、「湿原の純生産量はなぜ大きいのでしょうか」にも解説があります。
主に、岩城英夫 編著 (1979)「群落の機能と生産」 朝倉書店 を参考にしました。
寺島 一郎(東京大学大学院理学系研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2015-08-08
柴岡 弘郎
回答日:2015-08-08