一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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朝顔の夫婦咲について

質問者:   会社員   NISHI
登録番号3341   登録日:2015-08-07
今年、朝顔のカーテンを作ろうと曜白朝顔の苗を6月の初旬に店で購入したのですがそのうちの1鉢が一向に背丈は伸びずに高さ15センチ止まりで花が咲き始めましたした。
よくみると脇芽の部分がすべて花芽になっており、咲き出すと花が2個ずつ付き、伸びるべき蔓の先端も花が2個ついてそれ以上伸びない状態でした。
背丈の低い状態で次から次へと花を咲かせていたので、なぜだろうと自分なりに調べると夫婦咲だということがわかりそういう変異体だろうと納得していたのですが、8月になり暑い日が続きだしたらいきなり蔓が伸びだして正常な成長を見せ始めました。伸びたした蔓には各節に1個ずつ花芽をつけています。

一体、2か月間も蔓が伸びなかったのに蔓が伸びた原因と夫婦咲というのは何が原因で起こっているのか知りたくなりました。
宜しくお願いします。

NISHI様

ご質問どうも有難うございました。
アサガオを研究材料にされている基礎生物学研究所の星野敦先生と九州大学理学部の仁田坂英二先生に御回答いただきました。

【星野先生と仁田坂先生のご回答】
2か月間も蔓が伸びなかったのに蔓が伸びた原因:
九州大学でも夫婦咲の系統が育てています。しかし、ご質問のように成長が止まる状態が見られることはなく、夫婦咲であることが原因だとは考えにくいです。
蔓が伸びなかったということは、栽培条件が良くなかったか、成長点(茎頂分裂組織)が花芽に分化してしまい、それ以上は成長しない「芽止まり」という状態になっていたと予想されます。日が短いと芽止まりになることがあります。これらの原因が解除されることで、また伸びだしたと思われます。
また、栽培されている曜白アサガオはアサガオとマルバアサガオを人工的に交配した種間交雑によりつくられたアサガオです。このためアサガオ本来の性質ではない、おかしな性質が観察されます。日長に関わらず花芽を早く付けることも品種によっては観察されますので、これが芽止まりの原因かもしれません。

夫婦咲きの原因:
夫婦咲とは、もともと葉のつけ根(葉腋)から1つだけでてくる花柄(花梗)が、突然変異により2つでてくることです。夫婦咲(couple)という突然変異が原因ですので遺伝します。今年のアサガオで採種ができたら、来年また育ててみてください。夫婦咲のアサガオが楽しめるはずです。
主要なモデル植物では生殖成長モードになると抽苔し、以後花を付けるだけですが、アサガオでは強度の短日条件でない限り茎頂分裂組織は維持されて、葉腋からだけ花序ができます。野生型が1本の花序(花柄、花梗)を伸ばすのに対し、夫婦咲は、2本(複数)の花序ができる変異だと考えると叢生変異の類かもしれませんが、私には原因は推察できていません。
九州大学で保存されている夫婦咲(couple) と言われているものはいずれも浸透度が低く、最初は野生型同様、葉腋から1つの花柄(花梗)が出ていますが途中から2本の花柄が見られるようになります。野生型でも、株の状態が良いと一つの花柄から複数の蕾が分岐し(最大3花)、これと混乱している方がおられますが夫婦咲はこれとは異なります。

 星野 敦(基礎生物学研究所)、仁田坂 英二(九州大学・理学部)
JSPP広報委員長
松永 幸大
回答日:2015-08-12
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